学校のテストや人生大一番の入試、それに決断が損得に直結するビジネスシーンなど、勉強でも仕事でも、パッと頭で計算して道筋をつける力はそれだけで大きな武器になります。特に日々多くの数字が飛び交う情報社会の現代では、この「計算する力」は非常に重要な能力と言えるでしょう。
学習塾代表、大学講師として精力的に活動し、計算に関する様々な書籍を執筆している鍵本聡さんは、この計算力を身に付ける上では、「足し算」よりも「かけ算」の力を先に向上させる必要があると強調しています。その理由は何なのでしょうか。鍵本さんの解説を見てみましょう。
*本記事はブルーバックス『計算力を強くする 完全版』から、内容を再構成してお送りします。
足し算は「かけ算への持ち込み」
かけ算はすべての計算の基本です。足し算はかけ算より簡単そうに見えて、実はかけ算より奥が深いのです。その理由は以下の3つです。
1 .足し算は記憶に頼る部分が意外と少ない
足し算はかけ算に比べて記憶に頼る部分が少なく、どんな計算でもある程度の時間を割いて計算しないといけません。
例えば68×55の場合、計算視力(※編集部注:計算式を簡単な計算式に変形して計算すること。こちらの記事を参照)に持ち込んで、340×11にすれば3740という答えがすぐに出てくるのですが、68+55の場合はひたすら計算をするのみです。
足し算だと、ひたすら計算をするだけなので、時間がかかる photo by gettyimages
2 .かけ算と違っていくつもの数を足し算することが多い
日常生活で10個の数をかけ算するケースはほとんどありませんが、10個の数を足し算することはよくあります。
例えばスーパーマーケットで10個の品物を購入したときに、レジでは10個の数の足し算が行われます。