最近、書店でも「教養」をキーワードにした本を目にするようになりましたが、「教養」とはいったい何か? なぜ「教養」が求められているのか? 『齋藤孝の大人の教養図鑑』を上梓した明治大学教授の齋藤孝教授に話をきいてみました。
齋藤孝教授の語る、今の時代の「教養」とは!?
「教養」とは何かというのを、私は大学生になるときに、非常に考え抜きました。その結果、「教養」とは、人が成長していく、つまり自己形成のプロセスであると思いました。
ドイツ語にBuildingsロマンという言葉があります。それは教養小説と訳されたり、自己形成小説と訳されたりしますが、ロマン・ロランの『ジャン・クリストフ』のように、生まれてから死ぬまでに人間が成長していく物語のことなんです。
ふだん私たちが生きていくうえで、教養なしでも生きていけると思うかもしれませんけれども、実は教養を身に着けていくことこそが自己形成である。そういう考え方がビルディングというドイツ語にはあります。
私自身も、ここまでの人生でいろんなものに触れて、ああ、これは自分にすごくぐっときたなという感動だったり、こんなことがあるんだという驚きだったり、どうしてこんなことになってるんだろうという疑問だったり……。
そういう気づきや驚きというものが増えるたびに、教養が自分の中に、地層のように積み重なっていくのを感じてきました。そのように人間としての広がりや深みという両方をあたえてくれるのが教養だと感じています。