意外に小さい? 「ティラノサウルス」、じつは最初は「馬くらいの大きさ」だった…!
ティラノサウルスは最も研究されている恐竜ではありますが、まだまだわからないことが多いのが実際のところです。たとえば「ティラノサウルスには羽毛は生えていたのか?」という一般的な問いにさえ、まだ確定した問いはないのです。
一方で、ティラノサウルスの仲間は、北極に近いアラスカや日本にも生息していたことが分かっています。新たな発見があるたびに新しいことがわかり、そしてまた新たな謎が出てくるのがティラノサウルス研究なのです。
そんなティラノサウルス研究の最新事情を、『ティラノサウルス解体新書』(講談社ブルーバックス)から抜粋・再編集してお届けします。
巨大な砂漠で見つかった「ティムルレンギア・エウオチカ」
ところで、ティラノ軍団二軍メンバーは、白亜紀セノマニアン期の始めから白亜紀サントニアン期の終わりにかけ、2度目の失踪をしています。これを専門家の間では「白亜紀中頃のティラノサウルス類のギャップ」とよびます。
このギャップを終えてカンパニアン期に入ると、再びティラノ軍団があらわれます。2000万年もの間には、一体何がおこっていたのでしょうか? ――答えをいってしまうと、特別に何かがおこっていたわけではなく、ただ見つかっている化石が少ないだけです。
ウズベキスタン中央部に大きなキジルクム砂漠が広がっています。キジルクム砂漠の面積は、日本の国土の4倍弱。この砂漠で、ティラノ軍団が見つかりました。時代は、「白亜紀中頃のティラノサウルス類のギャップ」真っ只中のチューロニアン期中期から後期。見つかった骨は、頭一部、首の骨一部、背骨一部、尻尾一部、前足と後ろ足の指一部といったところ。
一見、全身の骨が見つかっているようですが、実はこれらはひとつの個体のものではありません。キジルクム砂漠の調査地になったポイントには、どこから流されてきて集まったのかもわからないほど、ばらばらと多くの骨が落ちていたそうです。
それでも、頭骨の脳が入っていた部位の一部に、他のティラノ軍団にはない固有の特徴が確認されたことから、それが新しい恐竜のものであると結論づけられました。その名は「ティムルレンギア・エウオチカ」。
「ティムルレング」とは、14世紀に中央アジアから西アジアにかけてティムール朝という帝国を建国したティムール大帝にちなんでいます。そして「エウオチカ」は耳が発達したという意味です。
大きさは中国のシアングアンロンと同じくらいで、全長3~4メートル、体重170~270キロと、そこまで大きいものではありません。この場所からはティムルレンギアらしい骨がたくさん見つかっているものの、ほかはすべてこれより小さいため、見つかったティムルレンギアは成体であると考えられています。