データの安全性と正確性をどう保証するか
11月の今回は11にちなんで、素数11が活躍する話題を紹介します。
「数学は役に立たない」と思っていらっしゃる人は多いかもしれません。しかし、実際には私たちの生活に数学が深く関係していることをご存じでしょうか。
私たちはパソコンやスマホなどを通じて、いろいろな情報を送ったり受け取ったりしています。ここにはデジタル技術が用いられていて、文字や音声、画像のデータを0と1の数字の列に置き替えて送受信しています。私たちはさまざまな数字に囲まれて生活していることになります。
そしてじつは、データの数字化の深いところで数学が用いられているのです。たとえば、情報通信の安全性と正確性の保証においても数学が用いられています。
「暗号理論」と「符号理論」
安全性を保証しているのが「暗号理論」です。データの送信時に他者から情報を読まれないように別の形に変換し、受信時に元の形に戻します。送受信する者どうしでは簡単な操作で、他者が解読するのは難しい方法が求められます。
他方、正確性を保証しているのが「符号理論」です。大量のデータを送受信すると、どうしても誤りが生じたり、一部が欠けたりします。誤ったデータであることを検出する方法が求められます。
今回は符号の話として、本の裏表紙に書かれている「ISBN」を例に誤りの検出について説明します(ただし、これから説明するISBNのしくみは2006年以前のものです。出版点数が増加したために、現在は異なるISBNが採用されています)。
誤りを見つけるための数字
ISBNは、「International Standard Book Numbers」の頭文字をとったものです。「国際標準図書番号」ともよばれ、個々の書籍を識別するためにすべての本につけられる国際規格の1つです。たとえば、足立恒雄『フェルマーの大定理が解けた!』(ブルーバックス)のISBNは、
4-06-257074-2
です。最初の「4」は日本(国名)を表し、次の「06」は講談社(出版社)を示しています。次の「257074」がこの本の番号で、最後の「2」が誤りを見つけるために付け加えられた数です。「チェックデジット」とよばれています。
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このチェックデジットで、素数11が活躍しています。
11はどのような役割をしているのでしょうか。
必ず「11」で割り切れる!
ISBNのしくみを考えてみましょう。
ISBNの4-06-257074-2の10個の数を左から順に1倍、2倍、…、9倍、10倍して、それらをすべて足します。見やすくするために、かける数を赤で書くと
4×1+0×2+6×3+2×4+5×5+7×6+0×7+7×8+4×9+2×10=209
のようになります。そうすると
この計算の答えは必ず11で割り切れます。
実際、
209=11×19
となって、209は11で割り切れます。
どうしてこのようなことがいえるのでしょうか。