AI計算力が成長エンジン、国産サービスへのシフトが追い風に

現地コード 銘柄名
00728

中国電信

(チャイナ・テレコム)

株価 情報種類

4.69HKD
(7/4現在)

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 中国の通信大手、チャイナ・テレコムは全体の設備投資を減らす半面、クラウド・AI分野の設備投資に関しては、2023年の前年比40%増に続き、2024年には21%積み増す方針。BOCIは海外のLLM(大規模言語モデル)開発者による中国でのAPI(アプリケーション・プログラミング・インターフェース)サービスへのアクセス禁止が、国産クラウドサービスへのシフトを後押しし、チャイナ・テレコムにプラスになるとみる。また、EBITDA(利払い・税引き・減価償却前利益)の下げ止まりを受け、クラウド事業の利益率が従来型の通信事業に近づいている可能性を指摘。現在株価のバリュエーション面の魅力と収益成長力を理由に、同社を通信セクターのトップピックとしている。

 2024年のクラウド事業の設備投資予算は21%増の460億元(非クラウドは8%減)。BOCIは明らかに、同社が戦略を見直したと指摘している。国際的な半導体供給リスクが高まる中、中国では全面的にハードウエア、ソフトウエアの国産化を実現しているベンダーが、汎用サーバーおよびAIサーバーの主要供給元となっている。

 同社のクラウドコンピューティング・サービスにおいては、AI用の計算力に対する需要の急拡大が新たな商機につながる見込み。政府機関や国有企業といった既存ユーザーだけでなく、第三者のインターネット事業者による需要が今後さらに増える可能性が高い。BOCIはまた、中国の通信キャリアは技術、コスト面で優れていると指摘。米国以外のクラウド事業者によるAI計算力の推論・学習需要が増える可能性があるとしている。

 2024年1-3月期のEBITDAマージンは28.2%と、前年同期比わずか0.4ポイントの低下幅に踏みとどまった。ネットワークの運用・サポート費や人件費の適切な管理によるもの。産業DX(デジタル化)事業の売上高が前年同期比10.6%増と、同社全体の増収率を上回り、売上全体の31%に寄与したことを考えれば、クラウド事業のEBITDAマージンはほぼ、従来型の通信事業と同水準まで上昇したとみられる。

 BOCIは続く4-6月期も産業向けインターネット収入(主にクラウド)が増収をけん引すると予想。12月通期に関しては、クラウドや計算力、AI、ビッグデータ、セキュリティーなどの新興ビジネスによるけん引を見込み、前年比6.8%の増収見通しを維持している。

 同社株価は年初から30%弱値上がりしたものの、BOCIは引き続き魅力的な水準にあるとの見方。目標株価を据え置き、株価の先行きに対して強気見通しを継続した。配当利回りが引き続き6.2%の水準にある上に、EV/EBITDA倍率(企業価値がEBITDAの何倍に当たるかを表す指標)は2.5倍。収益成長率がトップクラスであるにもかかわらず、海外の同業銘柄に比べ、明らかに低バリュエーションだとしている。一方、レーティング面の潜在リスク要因として、BOCIは通信料金に関する政府の規制強化が収益に大きく影響する可能性、米国による制裁強化が株価の重荷となる可能性を挙げている。