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サーフィンで繋がるガザと湘南。
「ガザ・サーフ・クラブ」から得た気づきとは。

2024.07.23

ドキュメンタリーは、社会を知る選択肢

サーフィンで繋がるガザと湘南。
「ガザ・サーフ・クラブ」から得た気づきとは。


サーフィンで繋がるガザと湘南。
「ガザ・サーフ・クラブ」から得た気づきとは。
<br /> 映画『ガザ・サーフ・クラブ』より © Niclas Reed, Middleton Little Bridge Pictures 画像ギャラリーを見る →

繰り返される攻撃で荒廃した街。増え続ける犠牲者の数。苦しそうに横たわる子どもたちの姿——。2024年6月、ロイター通信は、パレスチナ・ガザ地区を襲ったイスラエル軍の空爆で42人以上の命が失われたと報じ、また、停戦交渉の仲介国エジプト治安筋より7月13日、停戦交渉中断の旨を受けたと伝えた。連日流れてくるイスラエル軍とハマスの終わらない戦闘の報道に、心が痛む。

地中海に面したガザ地区は、狭い土地に約200万人以上が暮らしている。2006年、ハマスがガザ地区を実効支配。これを機に、隣国のイスラエルは、ガザ地区との国境に全長約65kmにわたる壁を建設し、人や物資の出入りを完全に封鎖。ガザ地区は、壁と海に囲まれた“天井のない監獄”となった。

そんなガザ地区(以下、ガザ)で、自由と開放を求めサーフィンに興じる若者たちの姿を映し出したドキュメンタリー映画がある。2016年に制作された『ガザ・サーフ・クラブ』だ。

2023年10月、イスラエル軍によるガザ侵攻を受け、映画配給会社ユナイテッドピープル代表の関根健次さんは、急きょ2024年1月より全国の劇場で上映していくことを決めた。さらに3月には、ドキュメンタリー作家の清野正孝さんが上映権を入手し、日本を代表するサーフタウン、湘南で上映会を実施。そこに集まった湘南ローカルサーファーたちの声とともに本作を掘り下げながら、今改めて“戦争“について考えを深めたい。

画像/ユナイテッドピープル提供

あらすじを読む

上映情報はユナイテッドピープル公式HPにて随時更新
8月3日(土)〜8月16日(金):横浜シネマリン(横浜)「医学生 ガザへ行く」と日替わりで上映予定。
9月21日(土)〜10月6日(日):シネコヤ(藤沢)「ガザ 素顔の日常」「医学生ガザへ行く」と日替わりで上映予定。

ガザのサーファーに思いを馳せる90分

湘南上映会の会場となったのは、神奈川県藤沢市本鵠沼にある某撮影スタジオ。自身もサーファーであるドキュメンタリー作家の清野正孝さんの声かけで、多くのローカルサーファーが集まった。昨年末、東京都内で行われた劇場公開に先駆けた特別先行上映会に参加した清野さんは、「サーファーの姿が見当たらなかったのが不思議だった」と語る。

タイトルを見た時、サーファーが観るべき作品だと思いました。ハマスとイスラエル戦闘の背景は日本人にとってとても複雑。だからこそ内情を少しでも知りたかった。特別先行上映のHPには『プロサーファー無料』との記載があり主催者の熱量を感じたけれど、会場にサーファーの姿はありませんでした。

ならばこの映画を湘南に持っていこう! 主催したのは、
そんな気持ちから。湘南上映会の告知はインスタグラムで一度きり。それにも関わらず、地元のサーファーからたくさんの反響があり40人近くが集まりました。異国の地、ガザにも波から喜びを得る人たちがいる。そんな共感が、無関心を打開するキッカケになることを実感しました。(ドキュメンタリー作家・清野正孝さん)
湘南で行われた上映会の様子 撮影/Chihiro Hashimoto

物語の舞台は2014年のイスラエル軍侵攻後のガザ。車にサーフボードを積み、穴だらけの道を走り海へと向かう主人公のイブラヒーム。23歳の彼はある日、カタールから来た女性に結婚を申し込んだが、「ガザには住みたくない」と断られたという。そして「僕らは戦争が続くことに慣れている」と続ける。

© Niclas Reed, Middleton Little Bridge Pictures

幾度となく繰り返されるイスラエルとの紛争。絶え間なく鳴り響く爆音。倒壊した建物の瓦礫の山。頻繁に起こる停電——。自らが置かれたこの過酷な状況に慣れるしかない。“慣れ“は彼らにとって生きる術なのではないか。

映画のビジュアルをみて衝撃を受けました。昔から紛争の絶えない、空気も人も、とても繊細であろうガザという土地とサーフィンがどうしても結びつかなかったから。暗くて悲しい物語なのかな……と観てみたら、もちろんつらい現実には変わりないけれど、『サーフィンがしたい』『サーフィンって楽しい!』という思いは、私たちと一緒なのだと。

違うのは、希望や夢を叶えるのが非常に困難だということ。主人公と歳の近い息子や私自身も、欲しいボードを買うことができ、好きなウェットスーツを着て海に入る。日常的にしていることが、いかに恵まれているのかということを痛感しました。
(自営業・杉山朋子さん)

あるドキュメンタリー映画で観た、立派なサーフボードを華麗に乗りこなすヨーロッパのサーファーに憧れる42歳のアブージャイヤブは、一度は海外へ行ってみたいという夢を諦めきれないでいる。そしてそれが叶わないことも知っている。

漁師である彼は、「ずっと海辺にいるが監獄みたいな感じだ。家と浜の往復しかない。死ぬまでここから出られないのは、絶望的だ。希望がない」と語る。

© Niclas Reed, Middleton Little Bridge Pictures
昨年、フィリピンで行われたサーフィンの大会で出会ったロシア人男性の選手は、一度帰国したら出られなくなるかもしれないから帰りたくないと、旅を続けていた。その話を聞いた時、戦争は、日本で暮らす僕らにとって遠い存在のように感じるけれど、決してそうではない。むしろ身近にあるという事実に、気付いているかどうかが大切だと感じました。(KP Camper代表・土屋貴洋さん)


当時のガザに、女性サーファーはいない。ガザでは、女性が海で泳ぐことを、罪(ハラーム)または恥とされているからだ。

サーフィンを楽しんでいた幼少期とはうってかわり、海から遠ざかってしまった15歳のサバーフは、久しぶりに家族でジェットサーフを楽しむ。頭に巻いたスカーフを外してキャップをかぶり、船から海中へ豪快にダイブ。その生き生きとした表情から、彼女の心情が真っ直ぐに伝わってくる。

© Niclas Reed, Middleton Little Bridge Pictures

そして力強い口調で主張する。
スカーフをかぶるかどうかは私の自由。周囲に口出しされるのは嫌」


再びスカーフを頭に巻き、長袖の服で肌を覆い砂浜へと戻ったサバーフに、小学生くらいの女子生徒たちが駆け寄り、みな口々に質問する。

「どれくらい泳げる?」「今度一緒に泳ぎたい!」「どこで習ったの?」——。

少女たちの瞳に映る海と戯れるサバーフの姿は、希望そのものだったに違いない。

女の子が成長したら、海に入れない、サーフィンができなくなる。それを決めたのは他国の人たちでもない、周りの男性たち。宗教上の問題と言われたらそれまでですが、私はものすごく違和感を抱きました。停戦になろうが、サーフカルチャーが発展しようが、たくさんのボードが寄付されようが、この問題の解決にはつながらない。けれど映画で彼女たちの姿を通じて、その土地の課題や現状を“知る”のは、とてもポジティブなこと。私はこの作品を観て、希望が持てました。


つい先日、フランス・ビアリッツで開催するサーフイベント『Queen Classic Surf Festival』はローカルサーファーとともに、ガザ初の女性サーファーRawand Abu Ghanemを支援することをインスタグラムで表明しました。少しずついい方向へ向かっていると信じています。
(MARIA  WETSUITディレクター・村上五十鈴さん)
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