「キャリアってなんですか?」
「まだ夢が見つかっていないんですがどうすればいいですか?」
もし高校生からそう聞かれたら、あなたは何と答えるだろうか。
原ゆかりさんは東京外国語大学を卒業後、外務省に入省。在職中の2012年にガーナ北部ボナイリ村を拠点にNGO MY DREAM. orgを設立し、アフリカのビジネスを支えてきた。2015年、外務省を退職後は、NGOの活動と並行し、三井物産ヨハネスブルク支店での勤務、アフリカ企業での勤務を経験。2018年独立し哲学とストーリーのあるアフリカの高品質商品を取り扱うProudly from Africaを運営している。まさに多様な世界を実体験してきた人だ。
2012年から幼稚園から大学まで多くの子どもたちに向け、出前授業や講演活動をしている。そこで伝えるのはアフリカビジネスや多様性、ダイバーシティ&インクルージョン、キャリア教育や国際理解など幅広い。そんな原さん自身、子どもたちの声からハッとさせられることも多いという。
こどもたちとの授業体験から伝えてもらう3回目は、キャリアに関して、授業で出てきた子どもたちの声と原さんの気づきをお伝えする。
#1)「「自己肯定感」の低い若者が最多の日本で「小さな一歩」の効果を知った日」
#2-1)「村全体で蛇口が3つだけ」出前授業で中学生が気づいた「当たり前」とは何か
#2-2)「もしぼくの妹が戦争で亡くなってしまったら」日本の中学生が考えたこと
山のてっぺんに旗を立ててそこを目指すだけがキャリアじゃない
先行きを見通すことが一段と難しくなっているVUCAの時代ーーvolatility(変動性)、uncertainty(不確実性)、complexity(複雑性)、ambiguity(曖昧性)、そんな風に表現される世の中を生きる中高生と話をしていると、様々な不安やプレッシャーの中で試行錯誤しながら自分の将来像を描こうと、努力を重ねている姿が浮かび上がってきます。
第1回は「マイクロステップ」、第2回は「当たり前って何だろう」ということをテーマに出前授業を振り返ってきましたが、第3回の今回は子どもたちからの反響の多い「山登り型キャリア」と「川下り型キャリア」についての話をテーマに綴りたいと思います。
私自身がキャリアや自分の生き方に悩み迷っていた時に、そんなしんどい気持ちを楽にしてくれたのが、「山登り型キャリア」と「川下り型キャリア」という発想です。
世間一般でキャリアが語られる時多くの場合はその前提に、なりたい自分に向かって一歩ずつ歩を進めていく「山登り型キャリア」の考え方があるように思います。「やりたいことを見つけなきゃ」という思考にがんじがらめになったり、どれだけ頑張っても頂上に辿り着ける気がしなくて息苦しくなったり...。経験のある方が多いのではないでしょうか。
+++
高校生からは、それまでキャリアについてどんなイメージを持っていたかと聞くと、不安の声が聞こえてきました。
「私はキャリアというと山登りキャリアしか思い浮かばなかったのですが、実際の頂上が今の自分には高い気がして、漠然とした不安を進学の話が出るたびに感じていました。また、その度に目標を立てて、ずっと目標を追い続ける日々を続けていくのかと不安に思っていました」
「私は気になる職業ややりたいことがあっても、資格のことや給料、大変さを考えて諦めてしまいます」
「キャリアというと、大人になって一つの目標のために選んだ仕事でゴール、終わりだというイメージを持っていました」