ブレイキン盛り上げるDJは「全てアドリブ」…即興ダンスに音楽がピタリの神ワザ〈関西発 月イチ! SPORTS〉
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パリ五輪(7月26日開幕)まで、3か月を切った。新競技として注目されるのが、選手が音楽に合わせて即興で踊るブレイキン(ブレイクダンス)だ。今回は、競技には欠かせないDJの舞台裏を紹介する。(後藤静華)
4月29日、大阪・ミナミでは、世界最高峰の大会「Red Bull BC One」の大阪予選が開かれていた。五輪と同じように1対1のバトル形式で交互に踊り、ジャッジが技術や独創性を評価していく。DJが流すアップテンポな曲が、会場を盛り上げた。
制限時間はなく、40秒弱で終わる人もいれば1分近く踊る人もいる。それでも、打ち合わせをしていたかのように、選手のタイミングに合わせて音楽が切り替わる。ブレイキンを専門に活動するDJの田中
「観察力が命。0・1秒でもズレないよう、目線はダンサーに置いて作業している。(緊張感で)ヒリヒリする」
田中さんは、近畿大の学生だった頃にダンスチームで活動していた。当時はDJではなくダンサーが音源を作り、大会に提出するのが当たり前。機材を買って製作するうち、ブレイキンの音楽にはまった。現在は服飾関係の仕事をしながら活動を続けている。
本番の曲目リストは100曲の中から構成
ブレイキンでは、ターンテーブルを使って印象的なフレーズを繰り返し聴かせる「ブレイクビーツ」が使用される。多い時は100曲の中から選び、抜き出すフレーズや組み合わせを構成。細やかな準備を積み重ねて、本番の曲目リストを完成させるという。
盛り上がりをどう演出するかも、腕の見せどころ。「テンポをどう変えるか、ギターやベースのパートをどこで取り入れるか。物語のように起承転結が生まれるよう、雰囲気を見て対応している」。
京都市出身で、2021年の世界選手権を制し、23年2位の福島あゆみ選手(ダンサー名・AYUMI)(40)は「同じ曲は一つとしてないので、毎回ワクワク感がある。(曲の切り替えが)スムーズだと私たちも踊りやすい」と話す。
田中さんは「音楽を通して、文化や交流を生み出すことができる。一過性の人気とならないよう、子どもから大人まで、楽しめる場を作っていきたい」。裏方に徹し、ダンスの魅力を最大限に引き出そうと考えている。
五輪予選シリーズは今月開幕
パリ五輪の代表枠は男女とも各16人(各国・地域2人まで)。日本勢は、男子の
他の選手は、5、6月に開催される五輪予選シリーズ(OQS)で切符を狙う。男子は、半井選手を抑えて今年の全日本選手権を制した岡山市出身の菱川一心選手(同・ISSIN)(19)が出場。女子は福島選手や、22年の世界選手権覇者で埼玉県出身の湯浅亜実選手(同・AMI)(25)が突破を目指す。
五輪の採用が決まり、ブレイキンの知名度は向上した。一方で、28年の米ロサンゼルス五輪では実施されないことが決まっている。
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