「理想論だけでは…」帰還前提の復興「限界」…[教訓]<3>

スクラップは会員限定です

メモ入力
-最大400文字まで

完了しました

東京電力福島第一原発(奥)周辺に広がる中間貯蔵施設(2月25日、福島県双葉町で、読売機から)=大原一郎撮影
東京電力福島第一原発(奥)周辺に広がる中間貯蔵施設(2月25日、福島県双葉町で、読売機から)=大原一郎撮影

 過度な理想や目標はときに現実をゆがめる。東京電力福島第一原発事故の10年を振り返るとき、どうしても避けて通れないのが、<放射線量1ミリ・シーベルト以下まで除染>と<2051年までに廃炉完了>という二つの数値目標だ。

【独自】五輪開幕の直前、東北3県で「子ども復興五輪」

 事故後に慌てて、安全基準を作り始めたことが致命的だった。国際基準を参考に、帰還の目安は20ミリ・シーベルトとされた。1ミリ・シーベルトは長期の努力目標だった。政府関係者は「独り歩きして絶対基準になってしまった」と言うが、被害を受けた地元住民にとって低い値が好ましく見えるのは当然だろう。

 ただ、1ミリ・シーベルトは作業上あまりに厳しい数字だと後になってわかった。結果的に避難指示解除が遅れ、避難先での生活が長期化し、帰還が滞る要因になった、と言わざるをえない。

 こうした除染ありきの復興に一石を投じたのが、福島県飯舘村の前村長・菅野典雄さん(74)だ。昨年2月、居住を前提にしないなら、広域の除染を行わなくても、避難指示の解除ができる仕組みの導入を政府に求め、認められた。「理想論だけでは限界がある。一歩前に進むためには、現実を見ながら考えるしかない」

残り:601文字/全文:1237文字
読者会員限定記事です
新規登録ですぐ読む(読売新聞ご購読の方)
スクラップは会員限定です

使い方
「東日本大震災」の最新記事一覧
記事に関する報告
1893395 0 企画・連載 2021/03/08 05:00:00 2021/03/08 15:43:58 /media/2021/03/20210308-OYT1I50004-T.jpg?type=thumbnail

主要ニュース

セレクション

読売新聞購読申し込みキャンペーン

読売IDのご登録でもっと便利に

一般会員登録はこちら(無料)