コロナ禍 猛暑の防護服

写真と文 冨田大介 
読売新聞オンライン
制作・著作 読売新聞
 各地で猛暑が続く。浜松市では17日、国内の観測史上最高気 温に並ぶ41・1度を記録した。新型コロナウイルス感染症対策 の最前線に立つ人々は、過酷な暑さの中で闘っている。  都内でも最高気温が36・5度に達したこの日午後、東京都新 宿区の新宿消防署内では、救急の要請を受けて、無線がひっき りなしに響いていた。「乗用車の中に急病人。手足のしびれ。 熱中症の模様」。救急隊員たちは、水色の感染防止衣にマス ク、ゴーグルを慌ただしく身につけて、救急車に乗り込んだ。  約3時間ぶりに同署に戻った赤川研一・救急隊長(38) が一息ついて汗をぬぐった。「絶対に自分が感染を媒介させて はいけない。だから、春から雨がっぱを着て暑さに慣れる訓練 をしてきたが、それでも暑い」。15分後、赤川さんらは、ま た救急車に乗り込んで現場へ向かった。

慌ただしく救急車に乗り込み現場へ向かう赤川救急隊長ら救急隊員(2020年8月20日午前、東京都新宿区の新宿消防署で)

感染防止衣をまとい、現場へ向かう新宿消防署の赤川救急隊長ら隊員。鳴り止むことのない指令の無線に、食事を取れないことも。「正直、コロナは目に見えなくて怖い。それでも、万全の感染防止対策で、仲間たちと医療の現場を支えていく」(8月20日午前、新宿消防署で)

感染防止衣にマスク、ゴーグルを着用して現場へ向かう赤川救急隊長。春から雨合羽を着て暑さに慣れる訓練をしてきたが、それでも「暑い…」ともらした(8月17日午後、新宿消防署で)

救急搬送の急増で疲弊する救急救命士。真夏の猛暑が追い打ちをかける(8月17日午前、新宿消防署で)

雨具を着込んでの「暑熱順化トレーニング」。救急隊員や消防隊員は春先から体を熱に慣らし、熱中症にならない体を作ってきている(20日午後、新宿消防署で)

雨具を着込んでの「暑熱順化トレーニング」。救急隊員や消防隊員は春先から体を熱に慣らし、熱中症にならない体を作ってきている(20日午後、新宿消防署で)

 東京消防庁管内では、梅雨明けの今月1日から23日までに、熱中症の疑いで搬送された人は3452人(速報値)。搬送先の病院で隊員や救急車の消毒を終え、消防署に戻る途中で、再び指令を受けて、別の現場へ急行――。その繰り返しだ。朝、署を出た救急車が夜まで戻れないこともある。

新型コロナウイルスの陽性患者を搬送した際には、毎回、救急車内に高濃度オゾンを発生させて消毒を行う。1時間ほどの消毒時間中、救急車は使えなくなる(8月20日午前、新宿消防署で)

指令が入り、冷却ベスト用の保冷パックが並べられた横を走り抜け、救急車へ向かう救急隊員(8月20日午前、新宿消防署で)

感染防止衣にマスク、ゴーグルを着用する救急隊員ら。救急車に慌ただしく乗り込み、現場へ向かった(8月20日午前、新宿消防署で)

救急車2台と消防車などが現場へ向かい、がらんとした新宿消防署の駐車場(8月20日午前、新宿消防署で)

 埼玉県三芳町の「ふじみの救急クリニック」。屋外に設けられた「発熱外来」では、救急救命士や看護師らがPCR検査や搬送されてくる患者の対応に追われる。防護服が汗で肌に張り付く。フェースガードの下には玉の汗が浮かぶ。
 鹿野晃院長(47)が言う。「熱中症が疑われる患者は、新型コロナの患者と症状が似ているため、PCR検査のできる医療機関に集中する。暑さも加わって病院の負担は増している」

熱のこもる屋外の発熱外来。温度計の気温が40度を超える中、救急救命士や看護師らがPCR検査などの対応にあたっている。「ふらふらになりそうなこともある」と救急救命士の望月友太さん(41)は汗をぬぐった(8月21日午後、埼玉県三芳町の「ふじみの救急クリニック」で)

防護服を来て、屋外の発熱外来で働く救急救命士の小山楓多さん(25)。「こんな暑い夏に防護服を着て働いているとは正直思っていなかった。PCR検査やコロナ対応はまだまだ続く。先の長い戦いです…」(8月4日午後、「ふじみの救急クリニック」で)

5時間防護服を着続け、ようやく解放された小山楓多さん(25)。冷たい飲料を飲み干した(8月4日午後、「ふじみの救急クリニック」で)

防護服を着用し、PCR検査の対応などにあたる救急救命士たち。吹き出す汗で防護服は体に張り付き、ズボンはぐっしょりぬれていた(8月4日午後、「ふじみの救急クリニック」で)

汗で手に張り付く手袋。仕事が終わって取るときには手袋の中から汗が流れ出す(8月4日午後、「ふじみの救急クリニック」で)

PCR検査用のテントの中で検体を採取する医療従事者。隣のプレハブから冷気を引き入れているものの、涼しくはない。10人ほどの検体を採り終えると、汗が噴き出した(8月4日午後、「ふじみの救急クリニック」で)

PCR検査用のテントの中で検体を採取した医療従事者。10人ほどの検体を採り終えると、汗が噴き出し、汗をぬぐった(8月4日午後、「ふじみの救急クリニック」で)

熱のこもる屋外の発熱外来。温度計の気温が40度を超える中、救急救命士や看護師らがPCR検査などの対応にあたっている(8月21日午前、「ふじみの救急クリニック」で)

熱のこもる屋外の発熱外来。温度計の気温が40度を超える中、救急救命士や看護師らがPCR検査などの対応にあたっている(8月21日午後、「ふじみの救急クリニック」で)

熱のこもる屋外の発熱外来。屋根はあるが、熱がこもる。手元の温度計は40度を超えた。救急救命士たちはぐったり(8月21日午後、「ふじみの救急クリニック」で)

暑さ対策のため、防護服の下に保冷剤を入れた冷却ベストを着用して仕事をする救急救命士たち(8月4日午後、「ふじみの救急クリニック」で)

院内感染を防ぐために、ドライブスルー外来を続けている「ばばトータルケアクリニック」。遮ることのできない夏の日差しを避けるため、日傘を差して対応する姿も(8月3日午前、福岡県春日市で)

院内感染を防ぐために、ドライブスルー外来を続けている「ばばトータルケアクリニック」(8月3日午前、福岡県春日市で)

【写真、文】読売新聞東京本社・冨田大介
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