【チャールズ国王の肖像画】カミラ王妃は好感?「魔界の王」に賛否
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いつのころからか耳にするようになった「気になる言葉」を、漫画家でコラムニストの辛酸なめ子さんが独特の切り口で読み解く夕刊「popstyle」の人気連載「辛酸なめ子のじわじわ時事ワード」。今回は 【チャールズ国王の肖像画】 (ちゃーるず・こくおう・の・しょうぞうが)です。
チャールズ国王の新しい公式肖像画が賛否両論の渦を巻き起こしています。5月にお披露目されたのは、国王が中世から続くギルド「ドレーパーズカンパニー」のメンバーになって50年を記念した肖像画で、手がけたのは現代肖像画家、ジョナサン・ヨー氏。赤黒く描き込まれた背景に、赤い軍服を着た国王の顔が浮き上がって見えます。影のある表情も相まって、魔界の王のようなおどろおどろしい不吉な印象も与えます。
赤は生命力のほとばしりや、連綿と続く王族の血統を表現している、とも言えますが……。イギリスの美術評論家は「彼が関わったある種の虐殺をほのめかしている」「血に染まって見えて映画『シャイニング』のよう」などと酷評。カミラ王妃の「夫をよくつかんでいる」という評価もブラックジョークに感じられてきます。他にも「背景については、塔で処刑を待つべき」と手厳しいコメントが。
16世紀に描かれたヘンリー8世の肖像画を引き合いに出して「それ以来、おそらく最も洞察に満ちたイギリス君主の絵」と評価する美術関係者もいるようです。ヘンリー8世の肖像画は、薄暗い背景に、冷酷な表情で目に光がない国王が描かれ、彼の心の闇が表れたような作品として知られます。
肖像画の除幕式では、絵を見た国王が一瞬ショックを受けた反応だったそうです。自分の本性に直面させられたのでしょうか。ヨー氏自身は「一人ひとりの顔に刻まれた人生経験を捉えることに全力を尽くしている」と、コメントしました。これまでも各界のセレブの肖像画を描いてきたヨー氏。2007年には、当時アメリカ大統領だったジョージ・W・ブッシュをモデルに、ポルノ雑誌の切り抜きをコラージュして作った非公式の肖像画を発表し、物議を醸しました。悪意を感じさせる作品で話題になった人物に重要な記念の肖像画を依頼するとは、イギリス王室もチャレンジ精神があります。
ヨー氏は国王が皇太子だった頃に制作しはじめたそうですが、もしかしたらこの作品は何かの予言かもしれません。ヘンリー王子やメーガンさんの言動に「国王が激怒した」というニュースを目にしますが、まさしく烈火のごとく怒っている姿を捉えた絵画のよう。この肖像画は次男夫婦の反省を促すことになるのでしょうか……。
キャサリン妃の肖像画
チャールズ国王の肖像画の騒動の次は、キャサリン妃の肖像画が話題に。英雑誌「タトラー」の表紙を飾ったのはアーティストのハナ・ウゾー氏が描いたキャサリン妃です。
似ているかというと微妙で、この絵が投稿されたインスタグラムのコメント欄には「王族をけなしてる」「中学生の絵みたい」「王室の肖像画に一体なにが起こっているの?」など批判が次々書き込まれています。国王の肖像画への注目も分散されてキャサリン妃は間接的にサポートしているかのようです。国王とキャサリン妃の連帯感が高まりそうです。