紅麹問題発覚前、症例報告の医師に小林製薬「同種事例ない」…「他にも報告あったと聞いていれば問題提起できた」

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 小林製薬(大阪市)の「 紅麹べにこうじ 」成分入りサプリメントを巡る健康被害問題で、発覚前の今年2月、同社に腎障害の症例報告をした医師が読売新聞の取材に応じた。この報告の際、同種事例の有無も問い合わせたが「ない」と事実と異なる回答をされていた経緯や詳細なやりとりが、同社が23日公表した調査報告書で明らかになり、医師は「過去に同様の報告があると聞いていれば、より強く注意喚起できていた」と同社の対応を批判した。(中田智香子、佐々木栄)

「紅麹サプリ摂取で腎障害」小林製薬に495万円賠償求め提訴…大阪府の40代男性
腎障害の症例について説明する阿部教授(3月30日、東京都板橋区で)
腎障害の症例について説明する阿部教授(3月30日、東京都板橋区で)

 取材に応じたのは、日本大学板橋病院(東京都)医師の阿部雅紀教授。サプリ摂取後に腎障害を起こした患者3人について2月1日、同社に情報提供していた。

 この際、阿部教授が健康被害の有無を尋ねたところ、同社は、腎障害の副作用について「今までのところ報告はない」と回答した。しかし、外部弁護士による「事実検証委員会」の調査報告書によると、同社に九州地方の別の医師から腎障害の報告が初めて寄せられたのは1月15日だった。

 阿部教授が2月22日に同社と面談した際も複数の消費者を含めて被害報告が相次いでいる事実が伝えられず、「小林製薬側とは、過去に事例がないという前提で話をしていた。他の医師からも報告があったと聞いていれば、もっと強く問題提起ができていた」と話す。

 またサプリと腎障害との因果関係が強く疑われたため、阿部教授は「摂取上の注意」に一定の追記を行うよう提案するなど、注意喚起するよう再三求めたが、同社は助言を採用せず、被害拡大防止につながらなかった。阿部教授は「事の重大さをわからずに対応していた可能性がある。公表が遅れ、被害が拡大してしまったのは残念だ」と悔やむ。

 報告書では、同社が健康被害の行政への報告を「因果関係が明確な場合に限る」と解釈して原因究明を優先し健康被害への対応が遅れた、と総括した。一方、同社は3月29日の記者会見で、阿部教授に同種事例がないと答えた理由を「共通の要因から来ているという認識がなかった」「症状に共通したものがなかったからではないか。 隠蔽いんぺい の意図はない」と説明していた。

  大阪公立大の三宅眞実・食品安全科学研究センター長の話 「小林製薬は医薬品も扱う会社なのに、なぜ薬に準じた対応を取れなかったのか、疑問が残る。安全に対して負う企業責任は薬も食品も同じであるべきだ。複数の医師から指摘があった時点で被害拡大防止措置を講じるべきだった」

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5623211 0 医療・健康 2024/07/28 11:45:00 2024/07/28 11:45:00 /media/2024/07/20240728-OYT1I50088-T.jpg?type=thumbnail

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