高まる火力依存、続く電気料金値上げ 北海道電力

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 北海道電力が、2013年に泊原子力発電所の再稼働に向けた安全審査を申請してから、8日で10年となる。電気料金は同年から上昇傾向をたどって道民生活を直撃し、原発に関わる人々は懸念や怒り、焦燥など様々な思いを抱く。「非稼働」の長期化がもたらす影響や背景を探る。

進まぬ再エネ 生活圧迫

 夫と2人で暮らす恵庭市の主婦(66)は、21年末に太陽光パネルを備えたオール電化住宅を新築した。自然に配慮した再生可能エネルギーへの憧れがあったからだ。パネルで発電した余剰分を売れば、家計が助かるとも思っていた。

 だが実際は、売電できるほど発電できておらず、月々の電気料金の支払いが想像以上にかさむ。昨年始まったロシアによるウクライナ侵略は料金上昇に拍車をかけ、8月分の料金は約6300円、12月分は約5万3000円だった。「今度の冬はいくらになるのだろう……」。料金明細を見るたび、ため息が漏れる。

 札幌市中央区の成澤利津子さんは脳性まひの障害を抱えながら一人暮らしをしている。月収は、障害年金や就労継続支援事業所で得る報酬など約11万円。テレビを見る時間を減らしたり、消灯時間を早めたりして節電に努めているが、今年1月の料金は1万円と前年より2000円ほど高かった。

 成澤さんは毎月、フードバンクからレトルトのご飯や缶詰を受け取っている。運営する一般社団法人フードバンクセンター(札幌市)によると、成澤さんのようにフードバンクを利用する人は、以前は月に60~70人ほどだったが、ここ1年で100人超に増えた。センターの担当者は「電気料金と物価高騰の影響だろう」とみる。

 東日本大震災前の10年度に全発電量の半分を占めていた泊原発は、12年5月に稼働を停止し、以来、一度も動いていない。北電は火力発電への依存度を高め、4割だった電源構成は現在、8割を超える。原油高により、火力発電の燃料費は増えて北電の経営に重くのしかかる。

 北電は、契約者の4分の3が加入する規制料金について、今年6月分から20・64%値上げした。この10年、北電の歴代社長は「再稼働まで当社を支えていただきたい」「再稼働すれば値下げする」と道民に理解を求めてきた。だが、道民の我慢にも限界がある。

太陽光など新エネ 1%満たず

 「北海道のポテンシャル(潜在能力)が高いとされる再エネの活用をお願いします」。4月20日、値上げに際して経済産業省が札幌市内で開いた公聴会で、出席者は相次いで再エネの導入促進を訴えた。

 四方を海に囲まれ、広大な土地がある道内は風力発電や太陽光発電などの適地だ。だが北電で太陽光、地熱、バイオマス、風力が占める割合は、合わせても1%に満たない。再エネ導入が遅れている理由について、北電は天候に左右される上、発電した場所から消費地に送る送電線の容量に余裕がないと説明。状況打開に向け、6月に就任した斎藤晋社長は「(温室効果ガスの排出量を実質ゼロにする)カーボンニュートラルの観点から、再エネ投資は拡大していきたい」と意欲を見せる。

 法政大の高橋洋教授(エネルギー政策)は「原発は再稼働したとしても、いつか老朽化して廃炉となる。長期的に再エネに転換し、原発に頼らない電源構成を考える必要がある」と指摘する。しかし再エネの普及には時間がかかる。北電が予定する泊原発の再稼働時期は26年12月。少なくとも3年以上は、高い電気料金が道民の暮らしを圧迫し続ける。

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