主要水道管耐震化を 更新効率化AIで診断 

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AIによる水道管の劣化度診断で、効率性が上がったと説明する会津若松市の担当者
AIによる水道管の劣化度診断で、効率性が上がったと説明する会津若松市の担当者

 能登半島地震では、石川県内で最大約11万戸が断水し、大部分が解消するまで5か月を要した。

 同県輪島市で避難所になった市立河原田公民館でも、断水でトイレが使えなくなった。館長の古谷裕さん(66)は「代わりに山水をバケツでくんで流したが、すぐに汚物で詰まってしまった」と苦労を振り返る。1週間が過ぎた頃からは、支援で届けられた簡易トイレでしのいだが、衛生状態の悪化で胃腸炎も流行したという。水道が本格復旧したのは6月上旬だった。

 現地では、トイレ付き車両が重宝がられた。本県からも棚倉町がけん引型のトイレトレーラーを、いわき市がトイレカーをそれぞれ同県珠洲市に派遣。いわき市は、2019年の東日本台風で静岡県西伊豆町に借りたトイレカーが役立った教訓から、22年に約1600万円で配備したものだ。

 能登での断水被害を受けて、福島県は、防臭機能のある袋に用を足して縛って捨てる「ラップ式トイレ」を導入した。ただ、福島、郡山、いわき、会津若松の4市にある倉庫に2台ずつ計8台のみで、「災害直後に緊急的に使うもの」(県災害対策課)との位置づけだ。トイレカーも、現地で水を確保できなければ使えない。

 災害時の断水の長期化を避けるには、どうすればいいのか。県は「根本的には水道管の耐震化を図らなければならない」(食品生活衛生課)との認識だ。厚生労働省のまとめでは、県内の主な水道管の耐震適合率(22年度末時点)は59・3%と、石川県の37・9%や全国の42・3%を上回り、都道府県別では全国5番目の高さだった。県によると、東日本大震災からの復旧で耐震化工事が進んだことが大きいという。

 だが、この先の耐震化には、人口減による水道料金収入の先細りや技術職員のなり手不足が立ちはだかる。県は21年に公表した水道ビジョンで、2070年度に県全域の料金収入が09年度と比べて23・7%減ると推計した。水道事業を担う職員も09年度からの10年間で160人(17・9%)減っている。

 こうした中、水道管の更新をAI(人工知能)で効率化させる方法で注目されているのが会津若松市だ。同市は20年度、AIに漏水履歴や周囲の人口、土壌などのデータを学習させて水道管の劣化度を診断した。早急に更新が必要と判断された水道管は、古い管を実際に掘り返す従来の方法では約400キロ(市内の水道管全体の約50%)とされていたが、約1割強にあたる約55キロ(同約7%)まで絞り込むことができた。

 水道管の古さが更新の必要に直結するとは限らない。同市上水道施設課の遠藤利哉主幹は「壊れやすさを『見える化』し、効率の良い作業につなげることができる」とAIの利点を説明する。能登半島地震も踏まえ、「災害時に避難所や病院などの施設に水を送れるように主要な水道管を基軸に耐震化の備えをしておくことが重要」と強調した。

 県食品生活衛生課の志賀臣一郎主幹兼副課長は「水道事業の経営基盤強化のため、事業者の広域化も進めたい」と話す。様々な対応を組み合わせ、災害に備えることが求められている。

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5589903 0 検証 能登の教訓 2024/07/19 05:00:00 2024/07/19 05:00:00 2024/07/19 05:00:00 /media/2024/07/20240719-OYTAI50000-T.jpg?type=thumbnail

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