対自民会派残るしこり 「両輪で議論を」指摘も

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開会した議会に臨む県議ら(6月13日)
開会した議会に臨む県議ら(6月13日)

■県民人気が生命線

 早朝から軽快な足取りで走ったり、時には自動トラクターに乗って最新のコメ作りを紹介したり――。宮下知事が就任以来力を入れるのが、知事の公式YouTubeチャンネル「A―Tube」だ。

 6月30日現在のチャンネル登録者数は約7500人。記者会見のライブ配信や1分以内にまとめたショート動画のほか、宮下知事が各地を訪れる様子や素顔に迫る企画など、計68本の動画があがっている。

 自らが広告塔となって発信する手法は、宮下知事がむつ市長時代から得意としてきたが、チャンネル開設当初の目標だった10万人には遠く及ばず、県広報広聴課の職員は「まずは1万人が直近の目標」と現実を受け止めている。

 積極的な発信を必要としているのは、知事選で40万を超える票を得た県民の高い人気が、宮下県政の「生命線」だからだ。県議会最大会派である自民党会派と蜜月関係を築いた三村申吾・前知事と比べて、昨年の知事選での推薦やその後の選挙を巡り、一時対立した宮下知事と同会派の一部にはわだかまりも残る。

■根回しも

 両者の対立が表面化したのは昨年7月、初めての県議会定例会を前に会派へのあいさつ回りをしている最中だった。

 「両輪という言葉そのものが旧時代で、もう一輪だ。一つの輪になって県政前進の旋風を起こしていく」

 宮下知事が、「車の両輪」にも例えられる執行部と議会の関係をこう表現すると、県議からは「議会軽視だ」と反発が相次いだ。ある自民のベテラン県議は当時、「一輪では倒れてしまうだろ」と皮肉った。県政運営について「看板を掲げるだけで中身が追いついていない」と批判する県議もいるなど、水面下での緊張関係は続いている。

 ただ、県議会との関係に腐心する宮下知事の姿もある。6月18日に突如発表した2人目の副知事人事。県議会一般質問で自民会派に度々問われ、回答を先送りしてきた人事案だった。

 宮下知事はこの日の早朝から、ベテラン県議や自身に近い県議らの携帯電話に自ら連絡して報告した。「報道で知った」との不満を作らないための根回しだった。

■対立超えて

 今後も最大会派・自民との付き合い方に、宮下知事の政治的手腕が問われる。

 知事選で対立候補の支持に回った清水悦郎県議は「過去にとらわれず、改革に取り組む姿勢は評価できる」と持ち上げるが、別のベテラン県議は「これまでは『お手並み拝見』としてきただけ」と状況次第では対立もいとわない可能性を示唆。底流に残るしこりの大きさをにじませた。

 自民会派はどう臨むべきか。宮下知事就任以降の約1年間、政策条例の提案は皆無だった。宮下知事側から提出された全議案も原案可決という状況だ。

 一般社団法人「地方公共団体政策支援機構」の長内紳悟代表理事は、「ルールを作る議会とルールで動く行政とでは役割が違い、地方自治は両輪でないと機能しない。宮下知事は県民への発信と同時に、県議会にも問いかけていくことが大事で、議会側も執行部案に対して対案を提示するなど両輪であることを行動で証明するべきだ」と指摘する。

 一輪か両輪か。その対立を超えて、ともに県の将来像を示し合い、議論できるかが双方に問われている。(おわり)

(この連載は、照沼亮介、古林隼人、水野一希、伊藤駿介が担当しました)

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5525040 0 検証・宮下県政1年 2024/07/01 05:00:00 2024/07/01 05:00:00 2024/07/01 05:00:00 /media/2024/06/20240630-OYTAI50012-T.jpg?type=thumbnail

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