[政治の現場]統一地方選<1>「選挙に出よう」町議会改革

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 23日に9道府県知事選の告示でスタートする統一地方選では、980の首長選と議員選が実施される。課題が山積する地方自治の現場を取材した。

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 北海道鷹栖町議会は、定例会を紹介するA4判チラシに、怪獣映画のポスターや週刊誌の中づり広告、家電量販店の広告などを模し、目を引くフレーズを並べている。チラシは2019年9月から、議会事務局に代わり、議員自らが作成する。

 統一地方選で実施される町議選(定数12、4月23日投開票)を控えた1日朝には、新聞折り込みで3月定例会のお知らせを配布した。このチラシにも「YOSAN―SHINSA(予算審査)」「現メンバー最後の大舞台」などの見出しが躍った。

 「チラシを見て、堅苦しくないんだなと思い、実際に見に来ました」

 定例会初日を迎えた5日、米農家を営む寺崎秀子さん(49)は、町役場3階の議場に駆けつけた。当初はユニークなチラシに対し、「ふざけすぎだ」との批判もあったが、1桁の日がほとんどだった傍聴者は倍増した。日曜日だった5日も29人が傍聴に訪れた。

 きっかけは、4年前の統一地方選だった。北海道のほぼ中央に位置する同町の人口はこの15年間で約1000人減り、現在は約6600人。町議選も11年から3回連続で無投票となり、なり手不足に危機感を抱いた若手議員らが改革に乗り出した。

 傍聴者が「説得力」や「テーマの設定」「聞き取りやすさ」など5項目で議員の質問を採点する「通信簿」も導入した。許可を得てジャポニカ学習帳に似せた傍聴ガイドブックを作成し、ツイッターで議員が事前に質問内容を説明する動画も投稿する。

 この日、初めて傍聴した商工会職員の椛沢泰知さん(26)は、町長に質問を繰り返した男性議員の「追及力」の欄で、最高点の「5」に丸をつけた。「議会って何をやっているか知らなかったけど、大事な役割だなとわかった」と感想を語った。

 町政への関心が高まったこともあり、1日に開かれた町議選の立候補予定者向け説明会には、定数12に新人3陣営を含む14陣営が集まった。16年ぶりの町議選となる可能性が出ている。

 鷹栖町議会のように知恵を絞り、試行錯誤する議会は多い。ただ、19年の統一地方選では、道府県議の26・9%、町村議の23・3%が無投票で当選し、ともに過去最高だった。15年の倍にあたる8町村では、立候補者数が定数を下回った。

 八代海と山に囲まれた熊本県津奈木町もその一つだ。かつて1万人近くいた人口は約4300人まで減少し、高齢化率は42・3%(全国平均28・7%)。議会の定数は段階的に10人まで減らしたが、町制施行56年で初の定数割れが生じた。

 担い手不足は、主力産業のかんきつ栽培や養殖漁業でも深刻だ。町議の一人は「そもそもどの分野もなり手が足らん」とこぼした。民主主義の根幹にかかわる「なり手不足」の深刻化に直面する議会は少なくない。(菊池一真、熊本支局 白石一弘)

 ◆ 統一地方選 =全国の地方自治体の首長と議員の選挙を同じ日程で4年に1度、一斉に実施する。1947年に始まった。任期途中の辞任などで選挙の時期は次第にずれ、今回は全地方選に占める割合は27・40%(2月1日現在)。前半戦は4月9日投開票で、知事選や道府県議選、政令市長・市議選、後半戦は同23日投開票で、それ以外の市区町村の選挙が行われる。

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