小池百合子・都知事が示した高校授業料の実質無償化、発言のタイミングは何を狙う
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筆者は地方の公立高校出身だ。実家から学校が遠く、高1から2年間は寮生活、高3は学校近くで下宿生活を送った。
「私立高なら学費がさらにかかったよね」
母が生前よく口にしていた。その後、東京の私大に進み、アパートの家賃なども含めれば、両親には相当負担をかけた。大学在学中、母は「アルバイトはいいから、勉強を優先して。仕送りを頑張るから」と励ましてくれた。今振り返ると、期待に応えてもっと勉強しておけばよかったなと反省する面もある。
一つは、国の動きを意識したとの見方
学費の話題を紹介したのは、東京都の小池百合子知事が12月5日、都議会の所信表明で、私立を含む都内すべての高校授業料を来年度から実質無償化する考えを示したからだ。
小池氏は所信表明で「子育て世帯は将来への不安など、様々な悩みを抱えている。高校授業料の実質無償化に大胆に踏み出し、スピード感をもって全力でサポートしていきたい」と強調した。
永田町で複数の取材先に、小池氏がこのタイミングで発言した狙いをたずねたところ、主に三つに集約された。
一つは、国の動きを意識したとの見方だ。小池氏の所信表明翌日だった12月6日付の読売新聞朝刊1面では、政府・与党の子育て支援税制の全容判明を報じた。2024年12月から児童手当を新たに高校生にも支給するのに伴い、16~18歳の子どもがいる家庭に適用されている扶養控除について、所得税の控除額38万円を25万円に縮小した上で残す、という内容だ。自民党のベテランは、「扶養控除を縮小する国との違いを見せ、少子化への本気度を示したかったのではないか」と分析する。もっとも、同じ私立高校でも都の助成対象ではない都外在住の生徒もいるため、同じ教室での不公平感が出ることへの懸念もある。
二つ目は来夏の都知事選、三つ目は前原氏らの新党
二つ目は、今後の政治スケジュールにある。来年夏の都知事選を意識した小池氏が、政策アピールで先手を打ったというわけだ。実質無償化のスタートは来年4月。知事選前に実績を強調するにはうってつけだとの意見もある。
そして三つ目。11月30日、前原誠司・元外相ら国会議員5人が新党を結成した動きだ。新党の名称は「教育無償化を実現する会」。小池、前原両氏は6年ほど前の2017年10月の衆院選前、希望の党結党を主導した同志。二人がほぼ同時期に教育無償化を打ち出したことで、「二人は水面下で連携しているのではないか。小池氏は前原氏らと再度タッグを組み、野党側の頭目として国政復帰を狙っているのではないか」(立憲民主党関係者)との臆測も呼んでいる。
岸田内閣の支持率が低迷し、自民党派閥の政治資金パーティー問題は拡大している。自民ではすでに次期衆院選や都知事選をにらみ、知名度の高い小池氏を取り込もうと接触する動きも出ている。
仮に小池氏が国政を狙い、前原氏も政局の中心を目指すなら
12月10日投開票の東京都江東区長選では、自民、公明などとともに、小池氏は元東京都政策担当部長を支援し、当選に導いた。告示日の同3日には、海外出張から帰国直後の小池氏が駆けつけた。自民関係者は、「窮地に陥った自民を救う名目で、小池氏が初の女性首相を目指して、次期衆院選に野党側ではなく、自民から電撃出馬する可能性もある」との見方を示す。