北朝鮮による拉致問題で、岸田首相が積極的な情報発信…つきまとう「言葉先行」の懸念
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岸田首相が北朝鮮による日本人拉致問題を巡り、積極的な発信を続けている。
「様々なルートを通じ、働きかけを絶えず行い続けている。早期の首脳会談の実現に向け、働きかけを一層強めていく」
首相は11月26日、被害者救出を目指し、東京都千代田区で開かれた「国民大集会」でこう述べ、自らと
5月には、問題解決のための「首相直轄のハイレベル協議」に意欲を示しており、首相の発言は、北朝鮮側とひそかに調整が積み重ねられているような印象を与えるものだった。
ただ、外務省関係者は「今年に入り、日朝間で中身のある協議が行われているとは思えない」と語り、「働きかけ」の実体に疑問を投げかける。
確かに、ハイレベル協議案の表明直後、北朝鮮側は「関係改善の活路を模索しようとするなら、両国が互いに会えない理由はない」(北朝鮮のパク・サンギル外務次官)との反応を見せた。しかし、「拉致問題は解決済みだ」とする態度は崩していない。
進む家族の高齢化
首相は日朝交渉の現状について、「事柄の性格上、具体的に申し上げるのは控えなければならない」と、詳しい説明を避けている。
北朝鮮側とは、内閣官房にある拉致問題対策本部事務局の警察庁関係者が中心となり、水面下での接触を図っているとみられている。「正恩氏に近い中枢の人物には届いておらず、協議や交渉というレベルに達していない」(日本政府高官)というのが実情のようだ。
首相が拉致問題の解決に強い意欲を見せるのは、高齢化が進む被害者家族への配慮がある。
政府認定被害者の親世代で、救出に向けた活動を続けているのは、横田めぐみさん(当時13歳)の母・早紀江さん(87)と、有本恵子さん(当時23歳)の父・明弘さん(95)の2人だけだ。今年2月末に体調を崩し、入院した早紀江さんは11月の記者会見で進展のない状況について、「本当にしんどい」と打ち明けた。