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「維新の支持層は低所得者」は本当か?<上>は こちら >>
日本維新の会は、全国的には「世帯年収」が高い層では支持率も高くなる傾向にあり、大阪府を含めた「近畿」では、年収が低い層からも支持を集めていることが、読売新聞の世論調査を通して浮かび上がってきた。同様に、立憲民主党などの支持層についても分析してみたい。
立民こそ低年収層が支え
世帯年収区分ごとの政党支持率をみると
「200万円未満」 自民33%、維新11%、立民8%、無党派層35%など
「200万~400万円未満」 自民34%、維新10%、立民8%、無党派層38%など
「400万~600万円未満」 自民33%、維新10%、公明6%、無党派層39%など
「600万~800万円未満」 自民37%、維新 8%、立民6%、無党派層42%など
「800万~1000万円未満」自民35%、維新12%、立民4%、無党派層46%など
「1000万円以上」 自民38%、維新15%、立民4%、無党派層39%など
だった。
自民支持層や無党派層は、年収の高低による特徴がみられなかった。
次に、回答者全体の6%にあたる立民支持層に絞って、世帯年収区分ごとに分けてみた。回答者全体の年収区分の分布との違いが興味深い。
「200万円未満」 21%(全体は17%)
「200万~400万円未満」 39%(同31%)
「400万~600万円未満」 16%(同19%)
「600万~800万円未満」 11%(同12%)
「800万~1000万円未満」 4%(同8%)
「1000万円以上」 5%(同8%)
(「答えない」4%)
回答者全体と比較すると、立民支持層は「200万円未満」「200万~400万円未満」の層が分厚くなっており、年収が高い層は全体よりも少ないことが分かる。つまり、立民こそが年収の低い層に支えられた政党といえる。菅直人・元首相が、維新に対して使った「低所得者層支持」の仮説は、自らが所属する立民の特徴を言い当てていたようだ。
経済格差は「政府に責任」、低年収層ほど高い割合
調査では、「経済格差が広がるのは、誰の責任が最も大きいと思うか」について、「政府」「個人」「企業」の3択で選んでもらう質問も行った。「政府」が49%で最も多く、以下、「個人」24%、「企業」20%の順だった。
年収区分ごとにみると、「1000万円以上」は「個人」が最多の43%だったが、「800万~1000万円未満」では「政府」40%が「個人」35%より多くなり、800万円未満の各層は「政府」が「企業」や「個人」を大きく上回った。特に、「200万円未満」は「政府」が52%、「200万~400万円未満」は「政府」が54%に上り、それぞれ「企業」や「個人」と30ポイント以上の差をつけた。
年収が低い層ほど、格差に対する不満が政府批判につながり、立民支持が比較的厚くなっていると考えられる。それにもかかわらず、低年収層の支持率でも政権与党である自民に大差をつけられていることが、立民の苦境を表しているといえる。
参院選の命運握る各党の経済政策
今回の世論調査期間中には、新型コロナウイルスの感染拡大の第6波や、ウクライナなどを巡る不安定な国際情勢があり、経済の先行きへの不安が高まった時期だ。7月の参院選でも、経済対策は主要な争点となるだろう。
「経済格差を縮小するために、政府が優先的に取り組むべきだと思う対策」を、8項目から三つまで選んでもらった。
全体では
「賃金の底上げを促す」 51%
「大企業や富裕層への課税強化など税制の見直し」 50%
「教育の無償化」 45%
「社会保障の充実」 43%
などの順だった。
これを世帯年収別でみると、「400万円未満」(全体の48%)では、「大企業や富裕層への課税強化など税制の見直し」が55%で最多となり、「社会保障の充実」の45%や「非正規雇用から正規雇用への転換を促す」の33%も、他の年収層に比べて高かった。政府による所得の再分配を求める声を反映した結果といえそうだ。
「800万円以上」(全体の16%)の最多は「教育の無償化」の54%。「職業訓練の充実」も16%で他の年収層に比べて高かった。教育費のような負担の軽減を期待する人が多い。
一方、「賃金の底上げを促す」や「生活保護などセーフティーネットの充実」は、年収による差はほとんどなかった。「ベーシックインカム(最低生活保障)の導入」は、年収が低い層、高い層の双方で比較的高かった。
共感を得やすい政策が、年収区分によって異なることがわかる。参院選で各党がどのような層をターゲットに政策を打ち出すかによって、選挙の勝敗を左右する可能性もある。
自民は支持層の年収分布が、回答者全体とおおむね一致しており、政策的には幅広い層から支持を得やすい土壌がある。その反面、幅広い年収層に受け入れられるように、総花的な政策になりがちだというジレンマもある。
一方、全国進出を目指す維新は、高年収層だけでなく、層が厚い「中間層」や「低年収層」の支持を得られる政策を掲げなければ、さらなる勢力拡大は難しいだろう。
議席数では野党第1党の立場にある立民だが、全体の半数近くを占める年収400万円未満の層の要望や不満をくみ取って政策を練り直し、足元の支持を固めない限り、自民を脅かす存在へと脱皮することはできないといえそうだ。