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幅広い分野の優れたサービスを日本全国から大募集 第5回「日本サービス大賞」エントリー受付開始

労働人口不足時代に向け、注目と期待が集まるサービス産業

2004年に「サービスサイエンス」という研究分野が誕生してから20年。今やサービスこそが経済・企業活動の中心であり、日本国内においてもGDPと雇用の7割をサービス産業が占めている。モノづくりのスキル、生産性の向上を目指して経済成長の道を歩んできたが、これからの少子高齢化、および労働人口が不足する未来に対しては、サービス産業の生産性向上が重要な戦略となってくる。

そこで2007年に創設されたのが「サービス産業生産性協議会(SPRING)」。多種多様なサービス産業の生産性を上げていくための、産学官が連携する共通プラットフォームだ。そして2015年、優良事例を広く発掘・評価することで発展を加速させようと、国内初の表彰制度「日本サービス大賞」が誕生し、これまでに計109件のサービスが内閣総理大臣賞などの各賞を受賞している。

PR効果に加え、自社サービスの強みと課題が再認識できる

表彰の対象は、国内に拠点を持つ事業者による「革新的な優れたサービス」だ。今回も、サービスの高度化や、きらりと光る新しい価値を提供しているサービスを広く募集する。

「革新的」と聞くと、AIなど最先端テクノロジーのイメージが浮かぶかもしれないが、例えば、高齢化に対応したバリアフリー化や、斬新な発想から生まれた地域活性化の事業など、あらゆるサービスが対象となり得る。この機会に、自分たちのサービスの成り立ちや価値を改めて考え、「日本サービス大賞」に応募することで、広く社会に発信してみてはいかがだろう。

前回は、コロナ禍にもかかわらず中小企業、農業法人、NPOなど、多種多様な業種・規模の事業者から749件もの応募があり、30件が各賞を受賞した。その中からユニークな事例を紹介したい。

プロのスタイリングで新たな自分と出会える洋服シェアリング(内閣総理大臣賞、東京都)

まずは30〜40代の働く女性を中心に利用が伸びている株式会社エアークローゼットの「airCloset」。オンラインで情報を登録するだけで、1回あたり3着もしくは5着の洋服が自宅に届く、独自の月額定額制ファッションレンタルサービスだ。

300ブランド・35万着以上の中から、プロのスタイリストが洋服を提案してくれるスタイルが、忙しい女性たちに刺さった。似合う洋服と出会う楽しさが得られる上、アプリで事前確認でき、気に入れば買い取ることもできる。さらに顧客ごとのデータベース「スタイリングカルテ」に情報が蓄積され、利用するほどデザインやサイズ感のズレが少なくなり、顧客満足度も上がっていくという。今後はメンズなどへの展開も検討している。

また、アパレル廃棄問題にも着目し、レンタル提供が終了した洋服の販売、衣料繊維リサイクルの活用などサーキュラーエコノミーも推進。2022年2月には廃棄率ゼロを達成した。

田んぼの真ん中にホテル!? 街づくりの大規模な実証実験(地方創生大臣賞、山形県)

「うちには何もない、誰も来ない」と言われていた地域を盛り上げる新発想が受賞した例もある。山形県庄内地域を舞台に革新的な街づくりを進めているヤマガタデザイン株式会社(現社名:株式会社SHONAI)だ。観光地でも何でもない田んぼの中に建てたホテル「スイデンテラス」を皮切りに、教育・農業・人材...と、地域活性につながる事業を展開し、民間主導による課題解決に取り組んでいる。

スイデンテラスは、美しい田園風景という地域の魅力に焦点を当てたブランディングが大成功。ここでしか味わえない宿泊体験が話題となり、現在では年間6万人の宿泊客を迎える。

その他、児童施設「キッズドームソライ」、有機農業を推進する「ヤマガタデザインアグリ」(現社名:株式会社NEWGREEN)など、各事業で着実な成果と新たな雇用を生み、定住者を増やしながら、地域のステークホルダーとともに課題解決を加速させる挑戦を続けている。

介護福祉施設が旅館を営むと、旅人も働く人も満足度がUP(国土交通大臣賞、愛知県)

時には本業からの横展開をきっかけに、新たな価値を持つサービスが生まれることも。2002年より認知症グループホームを運営していた当時から、年1回の旅行を利用者も職員も楽しみにしていたが、旅先では食事やお風呂などで困ることが多かった。マザーズグループ代表、株式会社マザーズ代表取締役の野口恵介さんは「障がいのある方やご高齢の方にも、ご家族と一緒に旅行を楽しんでいただきたいと旅館をスタートした」と話す。

10年以上の検討を経て、グループ会社の株式会社マザーズリヴがオープンさせたのは、本業の介護ノウハウをハード・ソフトの両面で具現化した福祉特化型旅館「サポートイン南知多」だ。1泊2日の満足度を最大限に高めるため、徹底した事前ヒアリングを行い、咀嚼・嚥下機能に応じた食事の提供や、電動リフト式の浴槽の使用や介助サービスなど、顧客に寄り添う。

宿泊客の6割を障がい者、3割を高齢者が占め、障がいのある方も一緒に働く新しいコンセプトの宿は、今後全国各地に広がりそうだ。

目指すは伝統産業の存続、有田焼のシン・町内制手工業(地方創生大臣賞、佐賀県)

最後に、地方の伝統産業の再活性化と新たな可能性に繋がった事例を一つ。佐賀県の伝統産業・有田焼は400年の歴史を持ち、昔から町内の職人たちによる分業制で続いてきた。販売も専門商社が担当。しかし需要の減少で、旧来の仕組みでは対応が困難に。そこで、1865年創業の「幸楽窯」(徳永陶磁器株式会社)が新たな「町内制手工業」を始めた。

多様なニーズに応えるため、パートなど一般の人や就労支援施設との連携を取り入れたのだ。同時にオーダーメイドで企業のオリジナル商品を開発したり、アーティストの新たな価値観で企画した商品を海外で販売したりと市場も拡大。さらに「トレジャーハンティング」として在庫が並ぶ倉庫を開放すると、国内外から買い物客が大勢訪れるようになった。

「日頃の取り組みが革新的なサービスと認められたことは光栄」と話す代表取締役の徳永隆信さんは、今後も町内での連携を深め、伝統産業を次世代に繋げたいと意気込んでいる。

社会課題解決の糸口は、サービスイノベーションにあり

誕生から9年、今回で5回目となる「日本サービス大賞」について村上輝康委員長は、「原材料価格の高騰や頻発する自然災害、本格化する人口減少など、社会課題が山積する今こそ、生活者の暮らしや経済を一変させる勢いを持ったサービスの登場を熱望している」と話す。

本ページでは4件しか紹介できなかったが、サービス産業生産性協議会の情報サイト「サービスイノベーション・サファリ」では、過去の受賞事例など、多岐にわたる優れたサービス事例を地域や業種から検索できる。

サービス産業生産性協議会の情報サイト「サービスイノベーション・サファリ」

また「7つの経営革新メニュー」という項目でも分類されており、利用価値共創、知識・スキル活用、付加価値共創...といったキーワードは自分のサービスを俯瞰する基準として参考になるだろう。これからの日本を輝かせる、あなたのサービスイノベーションを本賞を通じてぜひ広くアピールしてほしい。