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【衝撃】「ドアを開けた瞬間、腐敗臭が立ち込めた」 20年ぶりに父の家を訪れたら、驚くような光景が広がっていたーー

7/13 10:02 配信

東洋経済オンライン

20年ぶりに父の家を訪れると、玄関のドアを開けた瞬間に腐敗臭が立ち込め、顔を覆った。部屋には冷蔵庫がないというのに、スーパーで買った総菜や弁当が大量に放置されている。
本連載では、さまざまな事情を抱え「ゴミ屋敷」となってしまった家に暮らす人たちの“孤独”と、片付けの先に見いだした“希望”に焦点をあてる。
YouTube「イーブイ片付けチャンネル」で多くの事例を配信するゴミ屋敷・不用品回収の専門業者「イーブイ」(大阪府)が、入院で家を空けることになった父親の部屋へ片付けに向かった。依頼者である息子が見たものとは。

動画:20年ぶりに訪れた父の家「誰にも言えず途方に暮れてた」【前半】
 対立する意見「20年ぶりに訪れた父の家」寂しさから物が増える事もある【後編】2/2

■冷蔵庫のないリビングに放置された食べ物

 現場は大阪府にあるマンションの3LDKの一室だ。ここには70代の男性がひとりで住んでおり、イーブイに片付けの依頼をしてきたのはその息子(50代)だった。

 キッチンのあるリビングの状態がとくに酷かった。父親は冷蔵庫のない生活を送っていたというが、スーパーで半額の商品を見つけると買い込んでしまう癖があった。家に持って帰っても食べきれるわけもなく、保存ができないのですぐに腐ってしまう。しかし、その生ゴミを捨てることができない。

 そうして溜まっていった腐敗物が流し台やダイニングテーブルの上に放置されていた。

【画像】こびりついた油や虫の糞、大量の切手コレクション……腐敗臭が漂う父の部屋がすっきり片付いた! (40枚)

 「激落ちくん」といった掃除用具が転がっていることもあるが、未開封のままで掃除をした形跡はない。イーブイが片付けに入る前に息子が掃除をしたというが、相当強烈な臭いだったはずだ。

 流し台の下にある収納の扉を開けると、調味料、サラダ油、洗剤がズラリと並んでいる。開封済みのものもあれば、未開封のものもあり、同じものが2つ以上あるのも目立つ。それらのボトルには、油や虫の糞がこびりつき、ベトついていた。

 リビングにある机の引き出しを開けると、左側には調味料と割り箸が、右側にはペンやハサミなどの筆記用具が入っていた。きっと、この机の上で食事をし、作業にも使っていたのだろう。ここも油汚れに虫の糞が付着し、黒ずんでいる。

■「あの切手だけは捨てないでほしい」

 リビングは床が見えている程度の物量だが、とにかく生ゴミ系が多かった。一方、2つある和室と1つの洋室は生ゴミではなくモノが多い。和室の畳にはたくさんの木箱が無造作に置かれている。

 開けてみると、中に入っていたのは年代モノの食器や陶器など。本棚には、水墨画の作品集、楽譜、新聞記事や図鑑のページを切り抜いてまとめたファイルなどが保管されていた。

 多趣味な父親の姿をさらにうかがい知ることができたのは、書斎にしていた洋室だった。部屋を埋め尽くしているモノの8~9割が切手なのだ。

 「あの切手だけは捨てないでほしい」

 父親から息子にはそう伝言があったという。日本の切手だけではなく海外のモノまで綺麗にファイリングされたアルバムが何冊もあった。ファイリングしきれずに床に散らばっている切手もあったものの、好きなモノに関しては片付けたいという気持ちはあったのだ。

 父親の部屋はなぜこんな状況になってしまったのか。現場の見積もりを担当したイーブイの二見信定氏が話す。

 「お父さまはこの部屋に20年以上ひとりで住んでいました。息子さんはお父さまがこの家の前に住んでいた部屋にも行ったことがあり、そのときも今ほどではないですがだいぶ散らかっていたようです。

 その前は家族全員で住んでいた時期もあったそうですが、お父さま一人だけが“片付けられない兆し”があったと息子さんは言っていました。お父さまの実家もモノでだいぶ散らかっていたといいます。そういった環境で育ってきたことが影響しているのかもしれません」

■「だらしないというだけで依頼をするのは申し訳ない」

 父親、母親、娘、息子の家族全員で住んでいたときもあったが、家庭環境はけっしていいものではなかった。理由が“片付け”にあったかは定かではないが、父親と母親は不仲で、家庭内別居のような状態が続いていたという。

 愛があるうちはお互いの欠点そのものを可愛く思えたり、見て見ぬふりをできたりするものだが、それも長くは続かなかった。そして夫婦は離別の道を選び、子どもは母親が引き取ることになったのだ。

 以来、父親と子どもたちは疎遠になっていたが、父親はある日、病を患い入院することに。再婚せずにひとりで暮らしていたため頼れる人はおらず、息子が20年ぶりに父親の部屋を訪れた。そのときの部屋の様子は冒頭に記した通りだ。

 「生ゴミだけでもすぐに片付けてほしい」

 大家からそう言われ、子どもたちで片付け始めてみたものの、自分たちだけではどうにもできないほど状態は悪かった。こうして、イーブイに依頼をすることになったのだ。

 「今回依頼をしてくださった息子さんは、『自分たちみたいな人間が依頼をしていいのか』と躊躇があったようです」

 そう当時を振り返るのはイーブイ代表の二見文直氏だ。

 息子はイーブイに依頼をするにあたって、過去に配信された動画を数本見たという。そこに映し出されていたのはゴミ屋敷の住人たちが置かれたどうにもできない状況だった。

 精神的な病、高齢による身体の痛み、シングルマザーなどなど……。それに比べて自分の父は入院をするまでは健康である。息子から見る限り特別な事情があるわけではない。

 「ただ、だらしないというだけで依頼をするのは申し訳ない」

 息子はイーブイにそう吐露したという。脱いだら脱ぎっぱなし、使ったら使いっぱなし。昔からそんな父親の姿を見てきた。

 「同じように『依頼するのが申し訳なかった』と、私たちに頼るまでに時間がかかってしまう人はほかにもいます。その多くは、『お金を払うとはいえ、こんなに汚い部屋を片付けてもらうのは……』という後ろめたさから来るものです。

 でも、現場に行ってみると通常のゴミ屋敷となんら変わりはありません。必要以上に自己否定をしてしまっているように思います」(文直氏)

■部屋から出てきた生命保険の冊子

 月130軒以上のゴミ屋敷清掃をこなすイーブイに片付けられない部屋はまずない。強いていえば、料金の未払いが続く住人くらいだ。部屋の状態によって片付けを断ったことは一度もない。

 「ただ、だらしないだけじゃなくて、僕はなにかあったんだと思いますけどね」

 リビングの黒ずんだ机を片付けながら信定氏はそう言った。

 現場に入ったスタッフは5人。作業は約3時間半で完了した。終了間際、和室から生命保険の冊子と『おひとりさまの老後』(上野千鶴子著、法研)という本が出てきた。父親はすぐ目の前までやってきていた“ひとりの老後”を意識していたのだろう。

 子どもたちの知らないところで、長い間ひとりきりで孤独に苛まれていたのかもしれない。

【その他の画像を見る】こびりついた油や虫の糞、大量の切手コレクション……腐敗臭が漂う父の部屋がすっきり片付いた! (40枚)

東洋経済オンライン

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最終更新:7/14(日) 9:04

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