「変化を楽しむ仲間と共に、正しい未来をつくる」新たな船出にCEO出澤剛が考えていること

インタビュー

コーポレートブログ「LINEヤフーストーリー」では、経営陣や社員インタビューを通じて、私たちの挑戦やその裏側にある想いをお伝えしていきます。最初に登場するのは、代表取締役社長CEO出澤剛です。

「これまで歩んできた道は変化と挑戦の連続だった」。

インターネット業界の進化を創り出してきた一人でもある出澤は、これまで経営者として企業の合併、統合を数多く経験してきました。
新卒から保険業界へ飛び込み、その後は全く異なるインターネットの世界に舵を切ったキャリアは、一貫してより良い未来を見据えています。彼が目指す未来、これまで乗り越えてきた危機的状況や大きな転機となった経験についても聞きました。

出澤 剛(いでざわ たけし)

早稲田大学卒業後、生命保険会社に入社。営業担当を経て、2002年にオン・ザ・エッジへ。2007年4月にライブドアの代表取締役社長に就任し経営再建に取り組み、1年半後に通期での黒字化を達成。
買収・経営統合の後、2012年1月にNHN Japanの取締役に就任。2014年1月にLINE(NHN Japanの商号変更)取締役、2015年4月に代表取締役社長CEO、2021年3月からZホールディングス代表取締役Co-CEOを経て、2023年10月にLINEヤフー代表取締役社長 CEO(最高経営責任者)に就任。
長野県出身。2児の父親で、趣味はキャンプ、得意料理はペペロンチーノ。
座右の銘は「Carpe Diem(カルペ ディエム)」(ラテン語で「今を大事に」という意味)。

保険会社時代、出向先のベンチャーでITの面白さや可能性に魅せられた

――どんな学生生活を送り、ファーストキャリアをスタートさせたのですか?

学生時代は長野の田舎から東京に出てきたサブカル少年で、書店でバイトしながらたくさん本を読んでいました。マージャンやゲームにものめり込みました。就職活動には出遅れたものの、1996年に新卒で生命保険会社に入社して、八王子支社でリテール営業、組織マネージメントなどを4、5年経験しました。その後のキャリアプランに悩んでいた当時、私が入社した会社とITベンチャーのオン・ザ・エッジが合弁会社を作ってネット保険事業をやろうとしていた関係で、社内留学制度があり、その制度を活用して、オン・ザ・エッジ(※)に出向することになりました。

※オン・ザ・エッジ
堀江貴文氏によって1996年に設立。2004年に「株式会社ライブドア」に社名変更。2022年10月に新生「株式会社ライブドア」が設立され、再スタートを切った。

歴史も規模も業種も全く異なる環境だったわけですが、そこで、ネット業界で働く面白さを味わいました。日本でインターネットが本格的に普及し始めたのは1995年くらいですから、ネット黎明期で伸び盛り。インターネットの醍醐味といえば、一人の力がエンパワーメントされて、何倍、何百倍、何千倍にもなっていくとことだと感じます。それを実感しやすい時代でしたし、そういう世界に魅せられたんです。

――環境の違いをどのように捉えて、転籍を望んだのですか?

業界に飛び込んだばかりの私が、名だたる大企業に企画を提案できましたし、エンジニアやデザイナーとチームを組んで、コラボレーションしながらプロダクトを作るというプロセスも面白かったですね。自分の手がけた仕事が「世の中に響いているぞ」という手応えがありました。

一人で社会に与えるインパクトが大きいですし、インターネットには「可能性がある」、何より「めちゃくちゃ面白い」というのを実感していました。
当初は1年間の期限つきの出向だったので、元の安定した組織、環境に戻るべきか、葛藤はありましたが、飛び込むことに決めて2002年に転籍しました。若いリーダーのもと、機動力を持って自由に、迅速に動いていく組織も魅力的でした。

その後すぐに、モバイル事業を任されました。たった一人からスタートし、最終的には約100人規模の組織で、大きな収益を上げる事業に成長しました。責任者としてゼロからビジネスや組織を構築し、大きく成長させた経験は、自分にとって最初のターニングポイントだったと思います。

会社の危機的状況で経営者へ。プロダクトやユーザーを守るために奔走

――これまでずっと順風満帆だったわけではなく、困難もあったのではないでしょうか?

2006年、いわゆるライブドア事件が起こりました。一連の出来事を経て、2007年に私が社長となったのですが、これが第二のターニングポイントとなりました。

社内でバックグラウンドが異なるメンバーと一緒にチームを作り、世間からの評価が最悪の状況下で会社を守るために、海外の株主とも対峙していかなればなりませんでした。
さらに、社内のモチベーションは非常に低下していました。そのような困難な状況から会社を再建していくことが求められ、この経験はさらに大きな転機になりました。

――経営者として、困難な状況を乗り越えられたポイントとは?

愛着を持っていた当時の会社のカルチャーを守りたいという強い思いがありました。旧経営陣はエンジニアリングの重要性を理解しており、徹底してプロダクトファースト。日本においては数少ないエンジニア的発想で生まれた会社でした。
それにより、自由な風土が育まれ、現場への権限移譲も進んでいました。事件後もユーザー数が増え続けていましたので、ユーザーの期待に応えたい、という強いモチベーションもありました。

今改めて振り返ってみると、覚悟を決め、やるべきことに集中して取り組み続けることで、思った以上に落ち着いて進められたという感覚があります。

経営者として大切にしている価値観

――新たな組織再編があった中で、どのようにLINEが誕生したのでしょうか?

ライブドアは、2010年にNHN JAPANに買収されることになりました。その際、2つの異なる会社のカルチャーを融合させることが難しい面もあり、正直、この過程ではいくつかの対立も生じました。それでも「問題解決に時間を割くより、ユーザーに向き合っていかなければ会社自体が存続できない」というまさに危機的状況の中で、2011年、メッセージアプリ「LINE」が誕生しました。

LINEは、CPOである慎ジュンホの強いリーダーシップと努力の結晶です。彼は「グリッド(やり抜く力・粘り強さ)」や「多くの失敗をしよう」という言葉をよく使いますが、新しいフィールドであるスマートフォン市場に振り切って、「何百個もプロダクトを作り、大きな変化を起こす」という覚悟のもと、トライアンドエラーを繰り返しました。その結果、生まれたのが「LINE」です。LINEの誕生から、組織の融合も一気に加速しました。

――複数の企業の統合において大切なこと、今回の統合で目指していることは何ですか?

重要なのは「何をやるのか」「どの山に登るのか」という明確なビジョンをみんなで共有することだと思います。
これまでの経験を振り返ってみると、ライブドア事件後の組織統合では、純粋に再建したい、カルチャーを守りたい、モノづくりでもう一度評価されたいという想いがモチベーションになりました。LINE の時はこのままだと会社自体が存続できないという共通の危機感から、新大陸はスマホにあると信じて勝負できたわけです。

今回のLINEとヤフーの統合・合併は、GAFAが世界を席巻するなかで「国内で両社が競い合っても意味がない」「日本で最高のプロダクトを生み出し、全世界に展開していかなければその先がない」という思いが一致したことからつながりました。

インターネット業界では、優秀な人材、膨大なデータ、資金が国境を超えて、強い会社に集まる特性があります。強いところがより強くなる産業構造ですが、テクノロジーはその国にとって基幹産業でもあるし、インターネットは言語と文化を体現するので文化的な意味でも大きい。
だからこそ、LINEヤフーは、日本を代表できるような企業でありたいし、バトンをしっかり次の世代にわたしていきたい。そうしないと、国力や文化自体も変容してしまう可能性があります。それが良い未来か、悪い未来か議論はあると思いますが、私はそういう覚悟で臨んでいます。

――このような大きな決断から日々の意思決定まで、経営者として大切にしていることとは?

普段から、「本質的に何をすべきか」を自問自答するようにしています。
そしてもう一つ、中長期でどうなのかという視点。「正しい未来に向かっているか?」という問いも必要です。本質的な課題解決に向かっていれば、正しい未来へ続いていきます。
正しい未来とは、持続的な成長が続く未来です。ビジネスを行っていると、「これで短期的な利益が出ても、どんな価値につながるの?」というシーンによく直面します。目先の利益と中長期の成長は、トレードオフの関係になりがちです。
しかし、それがプロダクトづくり、人づくりの基盤になるのか。持続的な成長につながるのかどうか。そういう視点を大切にしていますね。

「いったん、踊ってみようか」と思える軽やかさ、変化を楽しむ集団でありたい

――LINEヤフーでどんな組織を作り上げたいと考えていますか?

「変化を楽しもう」と言い続けています。まずは「やってみよう」というマインドセットです。できない言い訳、やらない理由を考えるよりも、まずは「いったん、踊ってみようか」というステップの軽やかさ。それは「たくさん失敗をして、いいプロダクトをどれだけ作れるか」に通じています。
「変化してうまくいった」という経験も大事ですね。動いている間に発見があって、それが何かしらの成長につながるはずです。ですから、軽やかに動ける人に来てほしいですし、リーダーとしてはそういう機会をどんどん与えていきたいです。

変化への順応性は、最も重要だと思っています。世の中全体が爆速で変化していますし、ビジネスモデルの賞味期限は短くなり、ものすごく早いスピードで変化が起きています。生成系AIの出現で、さらに速度は上がるでしょう。そんな変化を捉えて、自分自身も変わって、乗り越えていける人物像が求められていますし、そういう集団にしていきたいです。

一方で、私たちのミッションは、「『WOW』なライフプラットフォームを創り、日常に『!』を届ける」。優れたプロダクトで世の中をびっくりさせたいわけです。人々の生活を楽しくしたいし、便利にしたいという思いで、集まっています。ユーザーに価値提供していくことを大切にする組織でありたいですね。

――「変化を楽しめる人」とは、常に能動的に動くタイプでしょうか?

必ずしもそうではないと考えています。これまでお話してきましたが、私自身、受動的にさまざまな変化を受け入れてきました。

現代社会では、キャリアだけではなくライフスタイルも多様化しており、結婚、子育て、介護など、さまざまなライフイベントでは、どうしても受動的に変化を迫られるタイミングもあります。
自分がコントロールできることもあれば、できないこともあります。その中でどのように対応できるか。状況によってはその変化を積極的に楽しもうと思える時もあれば、時には一歩引いておこうと感じる場面もあるでしょう。そこをいかに個人がマネージメントできるか。想定外の変化を迫られたときに、それを受け入れる柔軟なマインドも大事です。

日本を代表する企業として、グローバルへ

――合併を経た現在の心境、あらためて、今回の合併で成し遂げたいことは?

LINEヤフーの従業員は連結で28,000人を超えます。この規模の会社としては、爆速で合併を成し遂げました。みんなが一丸となって能動的に動いてくれたおかげだと思っています。やっとスタートラインに立てたという感覚もありますし、私自身、次に向けてワクワクし、奮い立っている状況です。

合併によって達成したいのは、ユーザーのみなさんに喜んでいただける素晴らしいプロダクトを提供することです。そして、私たち自身が成長し、日本やアジアのインターネット業界における価値ある存在になり、グローバル展開する企業になっていくことが目標です。

これらのプロセスにおいて重要なのは、統合したことで生まれる新しい価値です。これまでお話してきた通り、「変化を楽しむ」マインドを持った組織づくりを進め、長期的な成長を支える仕組みも構築したい。
次世代のリーダーを育成してバトンをわたしていくことも大切な課題だと考えているので、人材育成やそのための仕組みづくりもしっかり進めていきたいですね。

取材日:2023年10月24日
※記事中の所属・肩書きなどは取材日時点のものです。

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