研究
中央大学知的財産ポリシー
はじめに
中央大学は、百有余年の歴史を有するとともに、法学部、経済学部、商学部、理工学部、文学部、総合政策学部、国際経営学部、国際情報学部の8学部、博士課程・修士課程を置く各学部を基礎とする7大学院研究科、専門職大学院たる国際会計研究科・法務研究科・戦略経営研究科、そして、12の研究所・センター・研究組織を擁する総合大学として、様々な学際領域に多くの成果を創出してきています。このように、わが国有数の私立大学の一翼を担う中央大学は、独自の研究・教育活動を展開させることはもとより、大学の研究・教育活動の結果生じる所産を、広く大学の内外に還元させるという責務を担っているといえます。
社会がこのような責務を大学に対して要請してくるようになることと相俟って、大学の所有する知的財産を産業の発展と関連付けて戦略的に保護・活用することの重要性が、広く社会に認識されるようになってきました。そのため、2002年に、「知的財産戦略会議」の設置、「知的財産戦略大綱」の決定、そして「知的財産法」の制定がなされ、知的財産の戦略的な保護・活用が、わが国の施策として確立するに至りました。
一方、中央大学は、その擁する知的資源並びに歴史と伝統ゆえに、国の動勢に先駆けて、社会に対する「知」の還元を基本的な行動指針に位置付け、知的財産の創出と保護および活用について具体的方策を講じてまいりました。その行動指針は、理事会の経営方針である、「21世紀へ向けての本学の総合的な改革に関する理事会基本方針」(1999年5月17日策定)や、理事長の諮問機関である総合企画委員会が策定した「教学グランドデザイン」(2004年4月19日策定)と題する答申書により、さらに具体的に整備し、現在に至っています。
しかし、大学が社会に対する責務を果たし、積極的に研究・教育の成果を社会に還元していくためには、社会との関係を明確に示しつつ、詳細な具体的方策を広く公表し、多くの賛同を求めていかなければなりません。
そこで、中央大学は、私学としての独自性を前提としながらも、知的財産の創出と適切な管理・活用システムの確立に関し、指向すべき具体的な方針を定め、ここに「中央大学知的財産ポリシー」を提示することといたしました。
中央大学は、この知的財産ポリシーの下、社会との繋がりを積極的に確保し、「世界に存在感のある大学」を目指します。
1.基本的考え方
1.1中央大学の使命
わたしたち中央大学は、実学の伝統と私立大学の特性を生かしつつ、真理の探究(研究)とその継承(教育)をもって、個性豊かな人材の育成と、文化の創造・発展および社会・人類の福祉に貢献することを基本的な使命とし、この使命を果たすべく日々努力を重ねております。
世界的規模での新たな構造大変革期といわれる21世紀を迎えた今、本学は、この使命をさらに深め、さらに大きく広く発展させていくため、本学のあるべき姿のひとつとして「『知』を国内外に広く還元できる大学であること」を掲げました。本学は、論文等の公表による従来の「知の還元」に加え、産業界をはじめとする社会との連携を深め、権利として保護できる研究・教育の成果を知的財産権としてより直接的に社会へ還元して新産業創出に貢献していくとともに、社会との連携に触発された研究・教育活動が更に高度化し、その相乗効果によって社会と本学の質的向上が図れるよう全学一丸となって努力いたします。
1.2知的財産ポリシーの目的
この使命達成のために、中央大学は、ここに知的財産ポリシーを定めます。この知的財産ポリシーは、文系理系を問わず本学の教職員や学生等によって創出された知的財産の取扱いに関する基本的な考え方や、産学官連携活動への全学的な取組姿勢を学内外に示して理解を求め、研究・教育成果の効果的な社会還元をその目的といたします。
1.3産学官連携活動を推進するための指針
中央大学は、以下を指針として、産学官連携活動を積極的に推進いたします。
(1)指針1.
教職員の発明を奨励し、積極的に支援していくことにより、知的財産の創出と産学官連携活動が活発に行える環境作りをめざします。
(2)指針2.
産学官連携の窓口を産学官連携・知的財産戦略本部に一本化し、大学内はもとより社会に対してもわかりやすい窓口にいたします。
(3)指針3.
産学官連携によって知的財産を創出し、それを社会が活用できるよう、迅速に対応いたします。
(4)指針4.
産学官連携による知的財産の創出や活用において、社会からの要望に対して柔軟に対応いたします。
(5)指針5.
この知的財産ポリシーの運用における透明性を担保するため、知的財産取扱規程や利益相反ポリシーおよび利益相反マネージメント規程を別に定めます。
1.4知的財産ポリシーの対象者
この知的財産ポリシーは、中央大学の専任教職員およびその他別に定めるところにより発明等に関する契約を本学と締結している方を対象としています。(以下、「教職員等」といいます。)
1.5知的財産ポリシーの用語
知的財産ポリシーに記載する以下の用語は、次のように定義します。
- 1.「発明等」とは、次に掲げるものをいう。
- ・ア 特許権の対象となりうる発明
- ・イ 実用新案権の対象となりうる考案
- ・ウ 意匠権、回路配置利用権、またはプログラム等の著作権の対象となりうる創作
- ・エ 種苗法に規定する育成者権の対象となりうる育成
- ・オ その他の技術情報等に関する権利の対象となりうる案出または創作等
- 2.「職務発明等」とは、教職員等が本学の資金、施設、設備、およびその他の資源(本学に対して第三者から提供を受けた資金その他の資源を含む。)を使用して行った研究のうち知的財産権の対象となるものをいう。
- 3.「職務外発明等」とは、(2)に該当しない発明等をいう
- 4.「知的財産権」とは、次に掲げるものをいう。
- ・ア 特許法に規定する特許権および特許を受ける権利、実用新案法に規定する実用新案権および実用新案登録を受ける権利、意匠法に規定する意匠権および意匠登録を受ける権利、半導体集積回路の回路配置に関する法律に規定する回路配置利用権および回路配置利用権の設定の登録を受ける権利並びに種苗法に規定する育成者権および品種登録を受ける権利
- ・イ 著作権法第2条第1項第10号の2のプログラムの著作物および同号の3のデータベースの著作物に関する著作権法第21条から第28条に規定する著作権
- ・ウ アまたはイに掲げる権利以外であって、秘匿することが可能な財産的価値のある技術情報等に関する権利
- 5.「発明者」とは、発明等を行った本学の教職員等をいう。
- 6.「第三者」とは、教職員等以外の者または本学以外の研究教育機関、国、地方公共団体、企業その他の機関をいう。
- 7.「契約者」とは、第三者のうち、本学とその他別に定めるところにより発明等に関する契約を結んだ教職員等以外の者または本学以外の研究教育機関、国、地方公共団体、企業その他の機関をいう。
2.中央大学産学官連携・知的財産戦略本部
(Chuo university Liaison and Intellectual Property management office略称「CLIP」(クリップ))
中央大学は、本学における産学官連携戦略を策定し、知的財産の管理および活用と、知的財産に関する教育および研修を推進する「中央大学産学官連携・知的財産戦略本部(略称「CLIP」)」(以下、「CLIP」といいます。)を設置します。
CLIPは、既存の文系・理系の研究所等や研究開発機構と連携して教職員等の発明等の創出を支援し、知的財産の管理を行っていくことに加え、産学官連携の窓口となって知的財産の活用を促進に努めるとともに、知的財産に関する教職員等への啓発や研修、学部横断的な知財教育や卒業生に対するリカレント教育などの実施をとおして、知的財産ポリシーの具現化に努めます。
3.知的財産創出・管理ポリシー
3.1権利の承継と帰属
3.2発明者の保護
本学は、本学が知的財産権を承継した発明等に関わる係争、訴訟及び侵害については、本学が責任をもって対応し、発明者である教職員等の正当な権利を保護します。
3.3発明者に対する補償
3.4発明の届出から出願までの手続
3.5不服申立て
3.6 発明者自身による発明等の取扱い時期
発明者は、その発明等に関する知的財産権について、自ら出願や第三者への譲渡等を行うことができるのは、以下の期日以後といたします。
3.7発明等の出願管理および維持管理
3.8出願までの期間の秘密保持
中央大学と発明者は、その発明等の内容等の事項について、出願するまでの期間は秘密を守るものとします。ただし、本学と発明者が合意の上公表する場合や本学と発明者の責によらずして公知となった場合は除きます。
4.産学官連携推進ポリシー
4.1学外の方々との共同研究および受託研究の推進
4.2知的財産普及の促進
4.3不実施の補償
中央大学は、本学と契約者の共有となった知的財産権を本学が実施できない場合、その契約者が実施することにより得られる収益のうち、本学の持分に相当する対価を請求することができるようその契約者と事前に協議いたします。
4.4発明者の起業支援
中央大学は、本学が承継した発明等の発明者が自らその発明等の実施を希望する場合、発明委員会の議を経て、優先的にその発明者に知的財産権の全部もしくは一部を譲渡し、または専用実施権を設定し、もしくは通常実施権を許諾することにより、発明者が起業しやすいように配慮いたします。
4.5産学官連携窓口の一本化と相談の秘密保持
5.新たな人材の育成
6.知的財産ポリシーの適用と見直し時期
この知的財産ポリシーは、2005年4月1日より適用し、それより前の事例(既に本学に帰属されている知的財産権は除く)については遡って適用しません。また、この知的財産ポリシーの適用外とした、商標、プログラムおよびデータベースを除く著作物、研究マテリアル等の取扱いにつきましては、それぞれ必要に応じて今後対象とすることも検討していきます。その他社会情勢の変動や大学を取り巻く環境の変化等に応じて、適宜、柔軟に見直しを行います。