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日本企業のIT活用とデジタル化 - IT活用実態調査の結果から

第16回 IT費用の内訳 -どのような用途に使われているか

2024/07/11

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株式会社野村総合研究所では、2003年より毎年、売上高上位の国内企業約3000社を対象に「ユーザ企業のIT活用実態調査」を実施しています。この連載では、最新の調査から、いくつかの設問をピックアップして集計結果をご紹介します。日本企業のIT活用動向を知るとともに、自社のデジタル化および情報化の戦略を考える一助としてご活用ください。

注目される調査結果のエグゼクティブサマリーはこちら

前回は、日本企業のITへの支出を、新規開発、保守・エンハンス、運用の3つの用途に分けて検証しました。
今回は、それらの費用が、社内人件費に充てられているのか、外部への支払いに充てられているのかという観点で分析をしてみましょう。具体的には、ITへの支出を、社内人件費、外部委託費、外部サービス利用料、機器調達費・通信費の4つに分けてその割合を検証します。

・社内人件費
設計・開発、保守・エンハンス、運用等の業務やそれらの統括、マネジメント等に係わっている社員の人件費
・外部委託費
設計・開発、保守・エンハンス、運用等の業務に関する外部委託費
・外部サービス利用料
外部の事業者が提供するアプリケーションサービス(ASP)や、クラウドサービス(SaaS・PaaS・IaaS など)の利用料
・機器調達費・通信費など
機器、パッケージの調達費、ネットワークの通信費など、上記以外の費用

IT費用の支出(2022年度実績)を上記の4つに分けてその配分を尋ねたところ、社内人件費は回答企業の平均で22.6%、外部委託費が32.8%、外部サービス利用料が23.9%、機器調達費・通信費などが20.7%という結果になりました(図1)。企業は、IT費用の8割弱を社外への支出に振り向けていることになります。

図1 IT費用の支出割合(社内人件費、外部委託費等)

n=266

また、それぞれの費用について、2023年度予算の2022年度実績からの増減を尋ねたところ、4つの用途のうち、「増加」と回答した企業が最も多かったのは外部サービス利用料で、「増加」が48.9%と半数近くに上りました(図2)。次いで「増加」が多かったのは外部委託費の32.3%で、最も少なかったのは社内人件費の24.8%でした。4つの費用分類の中では、ほかに比べて外部サービス利用料の増加が突出していると言えます。

図2 IT費用の目的別2023年度予算の2022年度実績からの増減結果(社内人件費、外部委託費等)

n=266

外部サービス利用料の増加について考察する上で、日本企業がクラウドサービスをどの程度利用しているかを確認してみましょう。
調査では、ITに関わる様々な新技術の導入・検討状況を尋ねています。そのうち、クラウドサービスに関する集計結果を図3に示します。

図3 クラウドサービスに関する導入・検討の状況

n=289

クラウドサービスを導入している企業の割合は、パブリッククラウド(SaaS)66.1%、パブリッククラウド(PaaSまたはIaaS)55.0%となっています。前年度(2022年度)の調査結果では、この割合はそれぞれ59.3%、51.0%でした。
SaaSや、PaaS、IaaSといった外部事業者のサービスを利用するメリットは、自社内にシステムを構築する場合に比べて初期投資を抑えられ、システムの迅速な立ち上げが可能であること、ビジネスの拡大や縮小に応じてシステムのリソースを柔軟に拡張または縮小できることです。
システムのスケーラビリティを高めることは、市場の変化に迅速に対応できるような、ビジネスのアジリティ(俊敏性)を確保することにつながります。ビジネス環境が急速に変化する中でアジリティ確保の必要性は増しており、クラウドの利用も引き続き伸びていくと考えられます。クラウドへのシフトと、外部サービスに対する支出割合の増加は、企業のDX推進において必然的な流れと言えるでしょう。

前のページ:日本企業のIT活用とデジタル化 - IT活用実態調査の結果から
第15回 IT費用の内訳 -新規開発への支出はどのくらいか

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執筆者情報

  • 有賀 友紀

    システムコンサルティング事業本部

  • 坪内 佳世子

    システムコンサルティング事業本部

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