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アフリカにおけるスタートアップ及び投資エコシステムの現状

2024/07/12

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概要

近年、アフリカのスタートアップエコシステムが投資家から関心を集めている。特に北米からの投資が顕著である一方、日本を含むアジア太平洋地域からの投資件数はまだ少ない。特に今後アフリカへの参入可能性を検討している企業並びに企業のご担当者様を対象に、本コラムでは、①アフリカ全体のスタートアップ市場の現状と、②注目を集めているナイジェリア及びケニアの事例を中心に掘り下げ、その後③意思決定の際の参考となるように投資理由を調査し、最後に④日本企業がアフリカのスタートアップ市場に参入する際に重要となる具体的な手段となるエコシステムについて述べる。

アフリカにおけるスタートアップ市場の現状

2021年、世界的なテックスタートアップへの投資ブームに加えて、アフリカではスマートフォンの急速な普及によるフィンテックサービスの導入が推進力となり、取引額が大幅に増加した。アフリカのVC取引額は、2022年に過去最高の水準に達したが、2023年には地政学的緊張や金利の上昇、ハイテク株の下落、世界的な景気後退の懸念、リスク回避的な投資家の行動等による影響を受け、取引額が減少した。世界的な取引額は減少したが、2020年以前と比較して、アフリカのVC取引額は依然として高い水準を維持しており、世界の投資家からの関心が高まっている。

世界及びアフリカにおけるVC取引額(2015年~2023年)

  • 注)

    アフリカの取引額には、ベンチャー・キャピタルとベンチャー・デットの両方が含まれる。

  • 出所)

    AVCA「Venture Capital in Africa Report」 及びCrunchbaseよりNRI作成

アフリカのスタートアップへの投資は、特に北米からの投資が顕著である一方で、欧米と比較して日本を含むアジア太平洋地域からの投資件数は比較的少ない。

国際的な投資家によるアフリカのスタートアップへの投資件数(2021年~2023年)

  • 出所)

    AVCA「Venture Capital in Africa Report」よりNRI作成

特にナイジェリア、南アフリカ、ケニア及びエジプトの4か国は主要なスタートアップの中心地として「Big 4」と知られ、多くのVC投資を集めている。

アフリカ各国で資金調達を受けたスタートアップ数(2023年)

  • * アフリカ外

    アフリカ発祥の企業が、業務の効率化を図るために、アフリカ以外に本社を設置する場合を指す。

  • 出所)

    AVCA「Venture Capital in Africa Report」よりNRI作成

各国の詳細

ここでは、ナイジェリアとケニアを例に、その詳細と事例を取り上げる。

• ナイジェリア

ナイジェリアは、若年人口の多さや政府の支援策、急速なデジタル技術の普及により、アフリカにおけるスタートアップの中心地として急成長している。特に商業都市ラゴスはアフリカ大陸を代表するスタートアップ都市のひとつである。
ナイジェリアにおいてフィンテックは最も資金が集まるセクターであり、モビリティ・フィンテックスタートアップであるMooveは独自の信用スコアリング技術と配車プラットフォームでのデータ解析を活用し、配車サービスで働くドライバー向けに車両のローンを提供している。Uberを筆頭に、Mooveは現在までに4億4,400万米ドルの資金を調達した。

• ケニア

ケニアのスタートアップエコシステムは、政府の支援政策や急速なテクノロジーの導入により急成長を遂げている。また、同国の科学、技術、工学、数学(STEM)分野に焦点を当てた教育システムは、高度な技術者を育成しており、スタートアップエコシステムの成長を牽引している。
ケニアでは、アフリカ大陸においてナイジェリアと南アフリカに次いで多くのフィンテックスタートアップが存在している。例えば、アフリカのフィンテック企業であるM-KopaはデジタルマイクロペイメントとIoT技術を活用して、銀行口座を持たない顧客向けに金融サービスを提供している。同社にはStandard Bank Groupや住友商事が資金提供しており、2023年債券と株式で約2億5,500万米ドルを調達した。

投資理由

世界各国の投資家から注目を集めるアフリカのスタートアップ市場は、以下の理由で投資家に対して魅力的な投資先となっている。

①市場開拓とCVC

アフリカ市場は急成長を遂げており、多くの投資家が注目している。現地での足がかりを作り、長期的な市場開拓を目指す投資が主流となっている。例えば、総合商社のひとつはCVCを通じてアフリカに投資し、投資先とのシナジーを見据えて本業の成長・拡大を目指している。

②社会課題解決とSDGs

アフリカのスタートアップは、社会課題の解決に重点を置いて設立されることが多い。アフリカでは社会構造の問題が根深く、医療や農業など目に見える社会課題が数多く存在している。 これらの取組はSDGsにも直結しており、投資家に対しても魅力的である。例えば、経済同友会有志は2023年1月、アフリカの社会課題解決につながるスタートアップ企業の支援に特化したファンド運営会社「株式会社and Capital」を設立した。このファンドは、ヘルスケアや食料安全保障、再生可能エネルギー、職業訓練、女性活躍など、アフリカの社会的課題解決を目的としている。

③社会的なルールの未整備と新たな挑戦

アフリカでは、まだ規制が未整備であることが多く、新たなことに挑戦しやすい環境が整っている。このような環境は、革新的なスタートアップやテック企業にとって絶好の実証実験の場となっており、投資家に対しても大きな魅力を持っている。例えば、米国に本社を置くスタートアップのZiplineは、ルワンダでドローンを使った医療物資の配送サービスを展開している。ルワンダ政府は先進的な技術を積極的に受け入れ、規制面でも柔軟に対応している。これにより、Ziplineはドローン技術の実地検証を行い、他の地域や国への展開に向けて技術基盤を強化している。

日本企業による参入機会

アフリカではさまざまな機会が存在し、スタートアップ企業や投資家はエコシステムやコミュニティにおいて活発に情報交換を行っている。さらに、国際機関や公的機関からのマッチング支援等も存在する。

• エコシステムとコミュニティ

アフリカでは、スタートアップを支援するエコシステムやコミュニティが急速に発展している。これらのエコシステムは、投資家とスタートアップが出会い、情報交換を行う重要なプラットフォームとして機能している。代表的なものに、「AfricArena」や「Gitex Africa」といったスタートアップサミットがあり、スタートアップと投資家が直接議論し、共同投資やコラボレーションの促進、ネットワーキングが行われている。

• 国際機関や公的機関からの支援

国連開発計画(UNDP)や国際協力機構(JICA)等の国際機関及び公的機関は持続可能な開発に向けてアフリカのスタートアップ支援に積極的に取り組んでいる。例えば、UNDPの「Meet-Toshikas」プログラムは、日本の投資家とアフリカのスタートアップを結びつけ、成長の機会を提供している。

終わりに

アフリカのスタートアップ投資を検討する上で、現地のエコシステムやコミュニティが重要であり、これらを通じて情報収集することが不可欠であると考える。一方で、これらの機会にアクセスするには、十分な情報やネットワークが必要であり、投資を行う際には慎重に事業を見定めていく必要がある。

今回のコラムでは細部まですべて紹介しきれないため、ご興味のある方は、お気軽にご連絡ください。また、詳細版の資料をダウンロードいただき、ご参照いただければ幸いです。

執筆者情報

  • 濱田 雄介

    Nomura Research Institute Consulting and Solutions India Pvt. Ltd
    Global Knowledge Center

    Sustainability & Infrastructure Group Manager

  • 矢澤 まりえ

    Nomura Research Institute Consulting and Solutions India Pvt. Ltd
    Global Knowledge Center

    Senior Researcher

  • Nitya Bhasin

    Nomura Research Institute Consulting and Solutions India Pvt. Ltd
    Global Knowledge Center

    Researcher

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