副作用による健康被害の救済制度

現代人の健康を保持増進するうえで医薬品を大きな役割を担っていますが、有効性と安全性のバランスの上に成り立っているという性質上、添付文書の指示にしたがって適正な使用を行った場合でも、絶対に副作用を防止できるというわけではありません。そのため、医療機関で処方された、あるいは薬局で自分で購入した薬を適正に使用したにも関わらず、副作用で健康被害をこうむった場合には、医療費等の給付で被害者の救済を行う「医薬品副作用被害救済制度」が創設されました。

制度の詳細はPMDAのサイトへ

この制度で請求できる給付には、医療費、医療手当て、障害年金、遺族年金、遺族一時金などがあり、請求できる期限やその資格のある人が定められています。対象はあくまでも添付文書に記載されている用法・用量および使用上の注意に従って使用された場合に限られます。つまり、添付文書に効能効果のない病気に自己判断で使用した場合などは救済の対象外となります。

被害者やその遺族等に支払われる医療費は、製薬企業から納付される拠出金が充てられます。請求は健康被害を受けた本人かその遺族が医薬品医療機器総合機構に対して直接行いますが、医師の診断書等が必要となるので、まずは医師や薬剤師に相談する必要があります。

医薬品の副作用の危険因子としては、複数の併用、代謝能力が十分ではない乳幼児、肝臓の代謝機能が落ち、かつ腎臓の機能低下で体外への排出が難しくなる高齢者、妊娠、授乳等があります。遺伝的な要因で特定の薬の毒性作用に敏感な人もいます。副作用と思われる症状が現れた場合には、速やかに医師や薬剤に相談しましょう。

GCPを遵守した治験の手順

治験を実施するためには、①治験薬概要書・実施計画書の作成、②医療機関および医師の選定、③医薬品の管理、④副作用の情報収集、⑤記録の保存など、依頼および管理に係る手順書を作成する必要があります。治験薬の質、前フェーズまでの試験成績(第1フェーズの場合は動物を対象とした非臨床試験で得られたデータ)等を、客観的にまとめた治験薬概要書を作成します

被験者の人権保護が最優先です

実施計画書は、医薬品を被験者に投与した際に確認すべき項目を明確にするための根幹となるものです。治験薬の性質とこれまで得られたデータを吟味したうえで、確認すべき目標が明確になるような方法を設定しなければなりません。

治験実施計画書と同時に作成するCRF(症例報告書:Case Report Form)の見本は、医師に正確なデータを記載してもらうために、記載しやすい設計にする必要があります。加えて、CRFのデータをコンピュータに入力し、データをマネジメント(DM:Data Management)する人にも入力しなければなりません。

被験者から治験への参加の同意を得るために用いられる説明文書は、医師が作成を行います。そして、CRC(治験コーディネーター)が、その説明文書をもとにして、被験者に投与される医薬品の効能や副作用等の情報などをわかりやすく説明し、自身の判断で治験参加の是非を決定できるようにします。

治験中に被験者が治験の継続意思に影響を与えるような情報(非臨床試験で発がん性が見つかった、重篤な有害事象が報告された等)がわかった場合には、ただちに医療機関の長および担当医師に報告し、医師から被験者に対して説明を行い、継続の意思があるかどうかを確認しなければなりません。

治験を実施する医療機関と医師の選定は、依頼者側すなわち製薬企業に責任があります。したがって、依頼者は治験を適切に、つまりGCP(医薬品の臨床試験の実施の基準に関する省令)を遵守して実施できる医療機関および医師を厳選しなければなりません。治験の質とスピードの両方を確保するためには、この選考は非常に重要です。

実施計画が決定したら、依頼者の治験審査委員会(IRB:Institutional Review Board)に諮り、実施計画の承認を得ます。承認がなされれば、実施医療機関の長とその間で契約を締結します。その際、治験責任医師も契約内容を確認するため、その契約書に記名捺印または署名をします。

治験の依頼者である製薬企業が業務の一部を開発業務受託機関(CRO:Contract Research Organization)に委託する場合は、医療機関、医師、CROとの三者契約を締結しなければなりません。契約に盛り込む内容はGCPを参照し、漏れがないように注意します。

医薬品医療機器情報提供ホームページ

医薬品医療機器総合機構が発信元となって、インターネットにより、医師、看護師、薬剤師等の医療関係者、製薬企業、患者さんおよび国民に広く医薬品の安全性に関する情報を提供するのが、医薬品医療機器情報提供ホームページです。

重篤な副作用を早期発見

このサイトには、製薬企業から出された医療用および一般用医薬品の添付文書の情報をはじめ、厚生労働省から出された医薬品・医療機器等の安全性情報、同省に集積された副作用が疑われる症例に関する情報、患者さん向けの医薬品ガイド、重篤な副作用の疾患別対応マニュアルが掲載されています。

1999年から医療関係者向けの「医薬品情報提供システム」として運用が開始され、2004年からその提供対象を患者さん向けに広げた現在のホームページとして運用されることになりました。現在のページは、日本製薬団体連合会、日本製薬工業協会、日本医師会、日本薬剤師会などのホームページとリンクしており、詳細情報等が活用できるようになっています。

以下は、副作用の予測・予防に有用な患者向け医薬品ガイドおよび重篤副作用疾患別対応マニュアルについての概要です。

患者向け医薬品ガイド
患者さんが医療用医薬品を正しく理解し、自覚症状から重篤な副作用を早期発見できるようになっています。掲載されている医療用医薬品は、①添付文書に警告欄があるもの、②添付文書の「効能・効果に関連する使用上の注意」などの項に、重篤な副作用を回避するために「患者に説明する」旨が掲載されているもの、③患者さんに対して、特別に適正使用に関する情報が提供されているもの、となっています。

重篤副作用疾患別対応マニュアル
副作用の発見が遅れて重篤化するのを防ぐために、早期発見と対応のポイントを記載しています。医療関係者用には、早期に現れる症状や副作用の好発時期などのほか、医薬品ごとの副作用の特徴、疾患の概要、判別方法や治療方法、典型的な症例などが記載されています。

患者用には、副作用疾患について、医療関係者が患者さんやその家族に説明用として使用できるよう、気付きを促すための注意すべき初発症状が、医療機関への受診を促す注意とともに記載されています。

医薬基盤研究所の業務内容

日本における医薬品研究開発の国際競争力を高めるために、製薬企業や大学等が行う創薬研究を支援するために設立されたのが独立行政法人・医薬基盤研究所です。同研究所では、希少疾病用の医薬品や医療機器の開発等の開発振興業務を行っています。

イノベーションに尽力

基盤研は、厚生労働省所轄の国立医薬品食品衛生研究所、国立感染所研究所等を統合して、2005年4月に大阪府茨木市に設立された研究所です。設立の目的は、以下の3つの事業を行うことにより、製薬企業、大学等における研究を支援し、最新の生命科学の成果や最先端の技術を活用した画期的な医薬品等の研究開発を促進することにあります。

基盤的技術研究では、医薬品の開発に資する共通的・敷衍的な技術を確立するために、医薬品の安全性を予測するための毒性学的研究、疾患関連たんぱく質の解析研究・有効活用を行うための基盤的研究、遺伝子導入技術の開発・応用、次世代ワクチン・抗ウイルス薬開発のための研究等を行っています。

生物資源研究では、医薬品等の研究現場で必要とされる生物資源の開発・収集・保全、それらを現場に安定的に供給するために、ヒト細胞、遺伝子等の収集・供給、疾患モデル小動物の収集・供給、そのほか薬用植物に関する総合センターとしての業務などを行っています。

研究開発振興では、癌やエイズなどの重要な疾病の治療に役立つ医薬品の開発を目的とした基礎的研究や、医薬品等の研究開発を製薬企業等に委託して実施する研究開発を行っています。また、希少疾病用医薬品として指定を受けた企業等に対する助成金の交付を行っています。

このように基盤研は自らの研究と製薬企業、大学等の創薬研究を支援することにより、日本の医薬品産業が世界市場で競争できるように務めています。